自己都合から会社都合への退職理由の変更にはどのような違いとリスクがあるのか?

自己都合で退職を申し出た従業員が、あとから会社都合退職にしてほしいと求めてきました。
自己都合による退職と会社都合による退職ではどのような違いがあるのでしょうか?


解説

従業員にとっては、離職理由が自己都合よりも、会社都合のほうが雇用保険の所定給付日数が有利になるために、このような申し出があったと思われます。

離職票2の「離職理由」欄は、「事業主からの働きかけによるもの」(会社都合)と「労働者の判断によるもの」(自己都合)があります。会社都合は、さらに「解雇」「重責解雇」「希望退職の募集又は退職勧奨」に区分され、自己都合は大きく「職場における事情による離職」と「労働者の個人的な事情による離職」に区分されます。

自己都合の「職場における事情による離職」には「事業所での大規模な人員整理があったことを考慮した離職」「職種転換等に適応することが困難であったため」「事業所移転により通勤困難となった(なる)ため」などの区分があり、これらに当てはまれば自己都合の退職であっても、「特定受給資格者」に該当し、雇用保険の所定給付日数が会社都合での退職と同じになります。

また、個人的な事情による退職の場合でも、「妊娠、出産、育児等のため」など一定の離職理由や、事業主からの退職勧奨に該当しない企業整備による人員整理等に伴う希望退職者の募集に応じて離職した場合は、「特別理由離職者」として、「特定受給資格者」と雇用保険の所定給付日数が同じ条件になります。

従業員が会社都合による退職を希望する理由が、雇用保険の給付日数のみにある場合、会社としては、自己都合の場合であっても特定受給資格者や特別理由離職者に該当するとの説明をすることで問題は解決すると思われます。
しかし、問題は、特定受給資格者や特別理由離職者に該当しないケースで、離職理由を自己都合ではなく会社都合による退職を要求してきた場合の対応です。

自己都合ではなく、会社都合による退職とした場合に、後から「解雇された」と主張してくるケースです。
解雇の場合は、自己都合の退職のときには必要のない「解雇予告手当」を支払わなければいけません。

また、前述のように解雇が無効とされた場合には、退職したはずの従業員に退職後の賃金を支払わなければいけないことになってしまいます。

リスク回避策としては、おもに2つの対策が考えられます。

  1. まずは、退職した従業員から退職ないし解雇の承認をとっておくことです。解雇という形式をとる場合も、解雇の効力について争わないことや円満退職を確認した内容の書面でとっておくべきです。

  2. 次に、退職ないし解雇の承認を証明する書面ではなくても、退職した従業員が、雇用関係の終了が退職金支給の前提事実であることを理解して退職金を異議なく受け取った場合には、退職ないし解雇の承認と同様の効果がありますとされる場合があります。


過去の判例では、異議をとどめずに退職金等を受領し、その後2年以上解雇の効力を争う態度を示さなかったにもかかわらず解雇の無効を争うことが信義則に反するとした判断を正当としたものや、使用者側が退職金などで特別のはからいをしたことを十分理解したうえで了承し、特に異議を述べることなく退職金を受け取り、それらの効力について長期間争わなかったことは、労働者側は解雇の効力を争う権利を放棄したものというべきであるというものがあります。


判例

「八幡製鉄事件」(最高裁判決 昭和36年4月27日 民集15巻4号974頁)


概要

Y社の解雇通告に対し、従業員Xらが所定期間内に退職願を出さなかつたことにより、右期間の最終日である昭和25年11月5日の満了とともに解雇の効力を生じ、Y社が、解雇を前提として退職金等を供託したのに対し、Xらは当初解雇の効力を争うことを断念できず、退職願も出さず、退職金も受け取らないでいたが、その後、組合においても解雇を承認し会社側との抗争につき組合の支持を受けられないこととなったこと、その他諸般の事情にかんがみ、解雇の効力を争うことをあきらめ、かくしてXらは、遅くとも昭和26年1月9日までの間に、いずれも異議を止めず退職金等を受領し、しかも、その後本訴提起の時(昭和二八年六月三日)まで約2年数ヵ月の間何ら解雇の効力を争う態度を示していなかつた場合には、かかる一切の事情にあらわれた当事者双方の態度にかんがみ、当事者間に解雇の効力につき異議を述べない旨の暗黙の合意が成立したものと認めるべきであり、そうでなくとも、かかる事情の下で解雇の無効を主張することは信義則に反することとなるから許されないと判断した原審の判断を正当とした。

退職した従業員が失業保険の給付を申請する際、提出する離職票2の「離職理由」欄には、

①事業書の倒産等によるもの
②定年、労働契約期間満了等によるもの
③事業主からの働きかけによるもの(いわゆる会社都合)
④労働者の判断によるもの(いわゆる自己都合)
⑤その他

があります。

 

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