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診療所におけるコンプライアンス上の注意点とは?

法律や制度について何も知らないままに開業してしまい、知らずに法に触れていることがありそうで不安です。
診療所運営上で問題になりそうな法律上の義務について教えてください。


【この記事の著者】 横浜医療法務事務所 医業経営コンサルタント/行政書士 岸部 宏一
http://www.med-ss.jp/

診療所には、たくさんの法律による規制や届出義務等が課されています。
にもかかわらず、大病院ほど院内に法律に精通した人材が少ないこともあって、気がつくと違法状態が放置されていることが少なくありません。

普段はあまり問題にならなくても、いざ何か問題が起きると一気に過去からの問題の積み重ねが噴出し、責任が問われて大問題に発展しかねませんので、日頃から確認しておことがリスク管理につながります。

ここですべてを取り上げることはできませんが、無床診療所で見落とされがちな法律上の諸問題について、以下に整理してみます。

1.諸届けを要する場合
①保健所
診療所名称、診療時間や曜日(休診日)、勤務医、診療科目、診療所の構造変更等に変更があった場合には、届出事項又は許可を要する事項になります。
(診療所が個人開設か法人開設かにより範囲が異なります)

また、レントゲン撮影装置の設置(廃止)届、年間麻薬届等に加え、隔年末に全国一斉に実施される医師現況届等も忘れられがちです。

②地方厚生局
診療報酬算定にあたり必要となる施設基準届出に加え、毎年実績報告が求められる酸素の購入価格、在宅療養支援診療所での看取り・緊急往診件数等も毎年の報告をルーチン化しておくべきでしょう。

また、診療報酬改定前後は、新たな届出義務が発生したり、算定要件が変わったりと大きく動きますので、情報収集が重要であることは言うまでもありません。

③都道府県(医療法人の場合)
毎年決算後3ヵ月以内に事業報告、資産変更登記、登記事項届出が求められるほか、通常は2年で役員全員の任期が切れますので、その都度改選手続き、理事長変更登記(変更なければ重任登記)が必要です。

2.診療所管理者の運営上の義務
医療安全指針、医療機器管理安全指針、医薬品管理指針や業務マニュアル類の整備、職員の定期的な安全研修の計画と実施は、平成19年の第5次改正医療法施行以降、診療所管理者の「義務」となっています。

医師・看護師等の資格者の採用時の免許証原本確認と記録、各種院内掲示類の整備、カルテ・検査記録等の整備、レントゲン室周囲の放射線量測定(6ヵ月毎)やレントゲン従事者の被ばく管理、医療廃棄物(マニュフェスト含む)の管理、廃棄物処理業者の免許確認と適正な契約、職員の健康診断と記録、個人情報保護(管理)体制等も、医療法に基づく保健所の立入調査の際の検査項目とされています。

なお、看護師等医師以外の職員にレントゲン照射やレーザー照射等の「医行為」をさせて、医師法違反として摘発される事例が後を絶ちませんが、これらは論外です。

3.医療法人の運営
1‐②に挙げた届出義務に加え、役員の任期管理、役員・社員名簿や各種議事録の整備・保管等の義務が規定されています。
また、役員との金銭貸借、役員への住宅貸与等は、税法上の問題がなくても医療法上は違法となる場合がありますので、事前に専門家にご相談されることをお勧めします。

他にも、事業主・事業所として共通の義務等があることは言うまでもありませんが、本稿の性格上、他稿に譲ることとします。

これらの医療関連法規上の義務は、税法などと違い通常は問題になることが少ないため、後回しにされがちです。
しかし、万一の事故等発生の際、義務を果たしていながら不幸にも事故が発生したのか、それとも義務を果たしていないところに発生した事故なのかでは、

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