従業員が仕事以外で逮捕・起訴された場合、懲戒処分することは可能か?

従業員が勤務時間外の私生活でのトラブルで逮捕・起訴された場合、仕事には関係なくても懲戒処分することは可能ですか?

解説

労働契約は、企業がその事業活動を円滑に遂行するのに必要な限りでの規律と秩序を根拠づけるにすぎず、従業員の私生活に対する使用者の一般的支配まで生じさせるものではありません。

したがって、従業員の勤務時間外の私生活上の言動は、本来は会社とは関係ないため原則として懲戒処分の対象とすることはできません。

もっとも、企業秩序に直接関係する場合及び会社の社会的評価の毀損をもたらす場合には、例外的に企業秩序維持のために、懲戒処分をすることができます。

したがって、従業員が私生活でのトラブルで逮捕・起訴された場合も、すべてが懲戒処分にできるというわけではなく、企業秩序に直接関係する場合及び会社の社会的評価の毀損をもたらす場合に限って懲戒処分とすることができるということになります。

なお、従業員の勤務時間外の私生活上の言動に対する懲戒処分についても、就業規則に事前に懲戒の理由となる事由とこれに対する懲戒の種類、程度を記載し、労働者に周知させておかなければならないこと、及び、懲戒処分が有効となるためには、従業員の問題行動が就業規則上の懲戒事由に該当すると共に、処分内容が従業員の問題行動の性質・態様その他の事情に照らして社会通念上相当である必要があることは、通常の懲戒処分と同様です。

したがって、例えば、「万引き」「痴漢」「飲酒運転」などは、けっして軽微な犯罪ではありませんし一般的には懲戒処分の対象となり得ますが、懲戒解雇や論旨解雇といった重い処分とすることについては慎重に検討する必要があります。

過去の判例では、鉄鋼会社が、米軍基地拡張反対の示威行動の中で逮捕・起訴された従業員を「不名誉な行為をして会社の対面を著しく汚したとき」に該当するとして懲戒解雇にしたという事案について、不名誉な行為が会社の対面を著しく汚したというためには、従業員の行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類、態様・規模、地位、経営方針及びその従業員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、当該行為が会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないとの判断基準を示した上で、従業員3万人を擁する大企業の一従業員のそのような行為は会社の社会的評価を若干低下せしめたものにすぎないとして、解雇を無効とした判例があります。(判例を参照)


判例

「日本鋼管事件」(最高裁判決 昭和49年3月15日 民集28巻2号265頁)

概要

製鉄業Y社の工員として勤務していたX氏らが、在日米軍の立川基地拡張に反対する運動に加担して、逮捕、起訴された。これがマスコミで報道され世間に広く知れ渡ったため、会社側は「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」に該当するとして、X氏らを懲戒解雇とした。

X氏らは、当該懲戒解雇処分は無効であるとして、Y社の労働者としての地位の確認を求めて訴えを提起したところ、第一審及び第二審でX氏らの請求が認められたため、Y社は上告した。

最高裁判所は、従業員の不名誉な行為が会社の対面を著しく汚したというためには、必ずしも具体的な業務阻害の結果や取引上の不利益の発生を必要とするものではないが、当該行為の性質・情状のほか、会社の事業の種類、態様・規模、会社の経済界に占める地位、経営方針及びその社員の会社における地位・職種等諸般の事情から総合的に判断して、右行為により会社の社会的評価に及ぼす影響が相当重大であると客観的に評価される場合でなければならないとの判断基準を示した。

その上で、最高裁判所は、X氏らの行為が破廉恥な動機、目的から出たものではなく、これに対する有罪判決の刑も最終的には罰金2千円という比較的軽微なものにとどまり、その不名誉性はさほど強度ではないこと、Y社は従業員約3万名を擁する大企業であること、X氏らのY社における地位は工員にすぎなかったことなどの事実関係からすると、X氏らの行為がY社の社会的評価を若干低下せしめたことは否定しがたいものの、会社の体面を著しく汚したものとして、懲戒解雇または諭旨解雇の事由とするには不十分であるとして、Y社の上告を棄却した。

従業員が勤務時間外の私生活でのトラブルで逮捕・起訴された場合であっても、企業秩序に直接関係する場合及び会社の社会的評価の毀損をもたらす場合には、懲戒処分をすることができます。

 

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