学校で起きた人間ピラミッドの事故は誰の責任?

この災害共済給付金だけでは損害賠償金額をすべて賄えないことが多いのが現実です。
では、被害者や親は誰に対して損害賠償請求をすればいいのでしょうか?

法律上、学校は親に代わって子供を監督する立場であるため、「代理監督者責任の義務」があり、教職員の故意または過失によって生じた事故では、その使用者として学校が損害賠償義務を負うことになります。

その場合、公立校であれば「国家賠償法」、私立校ならば「民法715条」が適用されます。

「国家賠償法」
第1条
1.国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

「民法」
第715条(使用者等の責任)
1.ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。

【組体操事故の訴訟では学校側が敗訴している!?】

過去の判例では、高校の授業で、8段の人間ピラミッドの練習中にピラミッドが崩れ、一番下にいた生徒が脊髄損傷などの障害を負った事故の裁判で、1993(平成5)年、福岡地裁は学校の設置者に対して1億円超の損害賠償支払いの命令を出しています。

このように、組体操による事故の訴訟では、ほとんどの場合で教員の責任が認められ学校側が敗訴しています。
「教員と学校は危険性に十分留意すべき」
「事故を防ぐための適切な措置を講じる義務に違反した」
と判断されているのです。

ちなみに、2015年9月1日、大阪市は事故防止のため、ピラミッドの段数は5段まで、タワーの段数は3段までに制限することなどを正式に発表。
愛知県長久手市では3月、人間ピラミッドの段数を4段までに制限しています。

中学校での人間ピラミッドの最高記録は10段だそうですが、果たして、生命の危険を冒してまで高さを競う必要があるのでしょうか?

事故が起きて苦しむのは教員ではなく、子供たちです。

その危険性が指摘され、実際に全国で多くの事故が起きている人間ピラミッド──教育委員会や学校、教員、保護者など大人たちには早急な対応が求められています。