高額賠償金発生!自転車事故にどう対応する?

自転車での悪質な危険運転と、事故による高額賠償金の支払い判決の増加があります。

特に世間の注目を集めたのが、2008年9月、神戸市で起きた自転車事故の判決でした。
住宅街の坂道で、当時11歳の少年がマウンテンバイクで走行中、知人と散歩をしていた60代の女性に正面衝突。

女性は頭を強打し、意識不明のまま寝たきりの状態が続いていたことから、家族が損害賠償を求めて提訴。
2013年、神戸地裁で少年の母親(当時40歳)に約9500万円の支払い判決がありました。

子供が起こした自転車事故の場合、親には監督責任があるため多額の損害賠償金は親が支払わなければいけません。
そのとき、保険に加入していなければどうなるでしょうか。

最悪の場合、自己破産の可能性もあり、被害者も金銭的補償を得られず救済されないという問題が起こります。

ちなみに、9500万円の損害賠償金の内訳は以下のようになっています。

・将来の介護費用:3940万円
・事故で得ることができなくなった逸失利益:2190万円
・ケガの後遺症に対する慰謝料:2800万円 
・その他、治療費など。

あまりに高額だと感じる人もいると思いますが、交通事故の被害者弁護をしている立場からすれば、けっして高額とはいえません。

介護費用は、「女性の1日あたりの介護費8000円×女性の平均余命年数」、で算出されています。
今後、将来にわたって毎日介護が必要となるため、介護者の精神的、金額的な負担は相当なものになることから上記の金額が算出されています。

逸失利益は、専業主婦の基礎収入は月額約23万円と規定されていることから、平均余命の半分を得られなかったとして計算されていると思われます。

後遺症に対する慰謝料としては、自動車事故と比べても妥当な金額といえます。

損害賠償額が高額化している理由は、それだけ重大な被害を生じる自転車事故が増えているということなのです。

【法律の改正が自転車事故の厳罰化を後押し】
このように、自転車事故と高額賠償金の判決が増えていることなどから、2015年6月1日に「改正道路交通法」が施行されています。

これは、悪質で危険な自転車運転に対する罰則を厳しくするためのもので、信号無視や酒酔い運転、歩道での歩行者妨害、遮断機が下りた踏切への立ち入り、携帯電話を使用しながら運転するなどの安全運転義務違反等、14項目の危険行為を規定しています。

これらに違反した14歳以上の運転者は、まず警察官から指導・警告を受け、交通違反切符を交付されます。
その後、3年以内に2回以上の交付で安全講習が義務づけられるのですが、仮に受講しない場合、5万円以下の罰金が科せられることになりました。

また、こうした流れを受けて、兵庫県は県条例により県民に自動車保険への加入を義務化しました。
自転車が加害者となる事故が増加傾向にあるため、利用者の意識向上と被害者救済を目的に、2015年10月から施行されています。

ちなみに、2013年には、東京都と愛媛県で「保険加入を努力義務とする」条例が制定されていることを付け加えておきます。

警察庁が公表している統計資料「平成26年中の交通事故の発生状況」によると、自転車関連の事故は10万9269件で、この数年、交通事故全体に占める割合は約2割のまま高止まりの傾向にあります。

自転車だからと油断せずに、自分も相手もケガをさせることのないように、法律やルールを守って自転車を利用してください。