志望していた会社から採用内定が出るとすぐに入社を決断する方もいれば、さんざん迷った末、内定辞退の連絡を入れてくる方もいます。

また、入社するのか、それとも辞退するのか結論がなかなか出せない方もいます。

このような状況に直面した時、みなさんの会社は通常どのような対応をとっているでしょうか? 

私が在籍していた会社では本人に再度アポイントを取り、原則として来社していただいたうえで面談を行い、入社を迷っている原因が何かを確認していました。

この面談の目的は、本人の不安を解消し、会社側ができる範囲内で要望を満たすことにあります。

原因をヒアリングするその一方で、投げかけられた質問にはできる限りその場で回答するようにしていました。

入社を迷っている人を説得するのは時間のムダ

入社を決断できない理由は人それぞれですが、その中でも次の2つの理由が大多数を占めていると経験上実感しています。

給与面に関する理由

まずは、「給与面に関する理由」によるものです。

現在在籍している会社と内定を得た会社と比較して、後者から提示された給与のほうが高い場合にほとんど問題になることはありませんが、逆の場合はそう上手くはいきません。

月収あるいは年収の水準が下がれば、全く未経験の業界や職種に飛び込んでいくならまだしも、同じ業界や職種であればある程度予測していた場合であっても本人にモヤモヤしたものが残るでしょうし、家族がいて奥さんの家庭内での立場が強いようだと「いまの会社を辞めて新しい会社に入社した場合、給与が下がるんだけど……」とは切り出しにくいでしょう。

会社側から見れば、給与の提示は自社の給与規程に基づいた適正なものであるはずです。

したがって、一旦提示した給与にさらに上積みすることは、長期的視点から見て本来望ましいものとは思えません。

ただ実際のところは、上積みしたことで「交渉成立」となることも多いのではないでしょうか。

入社後の具体的な仕事のやり方がイメージできない

そして入社を決断できない理由のもう一つは、「入社後の具体的な仕事のやり方がイメージできない」ことによるものです。

いい意味では物事を慎重に進めるタイプなのでしょう。

しかし、内定を出し、会社を代表して本人を説得しようとしている人事担当者にしてみたら、「入社してもやっていく自信がないのか?」という不安を感じるものです。

この場合、イメージするのはあくまでも本人ですから、具体的なイメージができるような材料を会社として提供していくことになるでしょう。

しかし、残念なことに、これら2つの理由をクリアして入社したとしても、短期間で退職してしまうことが多いのです。

会社は説明し尽くしたと思っていても、本人からしてみれば懸念事項は決してクリアされていなかったのでしょう。

実際、内定を出したが入社を迷っている方を私が交渉・説得し、入社にまでこぎ着けたケースはかなりあります。

その中には一度は辞退した方もいます。ただほとんどの方がその後退職しているのが現状です。

経理職を募集し、採用面接を経て内定が出た若手のEさんのケース

当時外資系メーカーに勤務していた若手のEさんは、経理業務の経験は皆無に等しかったのですが、本人のこれまでの経歴と潜在能力を役員が高く評価し、内定となりました。

これに対し本人は、内定辞退の申し出をしてきましたが、是が非でも入社してもらいたい会社は人事責任者に対し即座に交渉するよう命じました。

結果

人事責任者はEさんに何度か電話をかけて、熱心に交渉しました。

「是非当社に来てください。そして一緒に仕事をしましょう!」

「将来の株式公開も視野に入れ、急成長を続けている会社でその分仕事は大変ですが、いろいろな経験もできますよ!」

人事責任者は自分の熱意を伝え、また、給与面等本人の要望にも多少の譲歩したことでなんとか入社してもらうことができました。

でも、これからという時にあっさり退職していきました。前職で従事していたような仕事をもう一度やりたいとのことでした。

IT企業で営業マンとして採用されたFさん

人材紹介会社経由で、同業他社に勤務中の転職希望者Fさんを面接し、内定を出しました。

業界での経験も豊富で会社としては絶対に欲しいという人材でしたが、色よい返事をもらうことはできませんでした。

このIT企業は超有名な大手メーカーの系列でしたが、Fさんは入社後に自分が仕事をしている姿を具体的にイメージできなかったようです。

結果

同業で勤務しているとは言っても同じ商品を販売しているわけでもなく、営業手法も全く違うのですからそれも致し方ありません。

それでも簡単に諦めるような会社ではなく、役員や人事担当者がアプローチを続け、どのような点を期待しているのか伝えるとともに、不安面を取り除く努力をしたこともあってめでたく入社となりました。

しかし、当初は順調に過ごしているように思われたFさんでしたが、その後心身の不調を訴え、会社を休みがちとなり、結局退職せざるを得ませんでした。

おすすめの記事