立証責任についての事例

金地金の売却にかかる取得費の立証責任について判断された事例
(大阪地裁平成28年10月13日判決)

税務訴訟における立証責任については、所得税事案に関し、

租税法律主義、申告納税主義を採用している現行税法下の税務訴訟においては、課税標準となるべき所得の存在を合理的に首肯させるに足る一応の立証責任は国が負担する

(最高裁昭和38年3月3日判決)とされています。

したがって、国側が立証責任を負います。

裁判所の判断

本件訴訟で、裁判所は、次のように判断しています。

課税庁が主張する額を超える資産の取得費が存在することを納税者が積極的に主張立証しない場合には、上記の額を超える資産の取得費が存在しないことが事実上推認されるものと解するのが相当である。

そして、

本件では、課税庁は売却額の5%を取得費であると認定しましたが、それを超える取得費があることを納税者が主張立証していないので、取得費は、売却額の5%と推認され、そのまま認定された、ということです。

判断理由

判断した理由は、以下のとおりです。

譲渡所得の金額の計算上控除する資産の取得費は、不動産所得や事業所得における必要経費等と同様、所得算定の減算要素であって納税者に有利な事柄である上、資産の取得は納税者の支配領域内の出来事であるから、取得費の額の主張立証は、通常、納税者たる原告の方が被告よりも容易である。

登記又は登録制度がない資産の場合には、被告によるこの点の主張立証は通常極めて困難である。

結論

「立証責任は、課税庁にありますよね」

と主張するだけでは通用しない場合がある、ということです。

それがどういう場合か、について、次のような判例があります。

一般に必要経費の点も含め課税所得の存在については課税庁に立証責任があると解されるが、必要経費の存在を主張、立証することが納税者にとつて有利かつ容易であることに鑑み、通常の経費についてはともかくとして、利息のような特別の経費については、その不存在につき事実上の推定が働くものというべく、その存在を主張する納税者は右推定を破る程度の立証を要するものといわなければならない。

(大阪地裁昭和46年4月26日判決)

したがって、

●経費

●納税者にとってその存在が有利

●納税者にとって立証が容易

という場合には、積極的に主張立証することが求められる、ということになりそうです。

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