今回は、東京地裁令和元年10月18日判決(TAINS Z888-2288)をご紹介します。

執筆:弁護士・税理士 谷原誠

内容としては、

高額譲り受けにより取得した土地の購入価額と時価との差額がどう処理されるか

についてです。

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(事案)

●納税者である会社は不動産の売買等を目的とする株式会社である。

●納税者が第三者との間で債権債務が存在していたところ、土地の売買に際して債権債務を相殺することにした。

●土地の時価は、7283万9889円であったところ、売買代金額は、1億8421万7112円であった。

●納税者は、この売買代金額全額を売上原価として損金の額に算入して法人税の確定申告をしたところ、税務署長から、購入価額のうち時価との差額は損金に算入できないとして更正等をした。

(判決)

●法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は、買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」については、「経済的な利益の ‥‥無償の供与」をした場合における当該「経済的な利益」の時価として、法人税法37条7項が定義する「寄附金の額」に該当することになるから、当該金額は損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないこととなるものと解される。

●この場合も、売買契約という当事者の選択した法形式を否認して時価による売買と差額分の金銭の贈与という二つの法律行為があったとみなすものでも、当該法律行為を売買と贈与の混合契約であるとみなすものでもなく、当該法律行為は私法上の性質としては売買契約であることを前提に、その売買代金額の一部を法人税法の適用上「寄附金の額」と評価しているものにすぎず、当該法律行為の私法上の性質を変更するものではないと解される。

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以上のとおり、判示して納税者敗訴(土地の購入価額と時価との差額は寄付金)としました。

ポイントは、「購入価額と時価との差額」は、「経済的な利益の‥‥無償の供与」となる、ということです。

そして、これは、

・「売買契約」を否認するものではない

・「売買+金銭贈与」と認定するものではない

・「売買契約と贈与契約の混合契約」と認定するものではない

ということです。

つまり、【法律行為の私法上の性質を変更するものではない】ということです。

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