今回は、国税不服審判所の裁決の中から、「重加算税賦課決定が取り消された事例」についてご紹介します。

執筆:弁護士・税理士 谷原誠

令和元年11月19日裁決です。

相続人が預金の存在を知りながら税理士に伝えなかった事例です。

そして、担当税理士も税務調査の際、「私に見せていないのだからそうなります。」と諦めていた事案です。

(事案)

●請求人の兄が死亡した後、請求人は、被相続人名義の預金口座3口を解約し、自分の預金口座に入金した。

●その後、相続税申告を税理士に依頼し、相続税申告書を提出した。

●その際、相続人は、先の預金口座の存在を税理士に説明しなかったため、相続財産から漏れた。

●後日税務調査があり、当該預金口座などの申告漏れを指摘され、相続人が税理士に預金口座の存在を説明していなかったことが判明したため、課税庁は、隠蔽又は仮装があるとして、重加算税賦課決定をした。

(裁決)

【結論】

●本件相続人が当初から相続財産を過少に申告する意図を有し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたものと認めることはできないとして、重加算税賦課決定を取り消した。

【理由】

●納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるものと解するのが相当である。

●相続人は、本件預金口座の存在を知りながら税理士に伝えなかったことが認められる。

●本件預金を原処分庁が容易に把握し得ないような他の金融機関や本件相続人名義以外の口座などに入金したのではなく、解約した本件預金の口座と同じ金融機関の本件相続人名義の口座に入金していた。

●本件相続人は、平成27年5月15日に当該入金をした後、平成30年4月26日に至っても当該口座を解約していなかった。

●本件預金の預金通帳が使用済通帳として破棄できる状況にありながら、本件調査が行われるまで保管していた。

●本件調査の際には、本件調査担当職員の求めに応じて、本件預金の使用済通帳を素直に提示している。

●調査担当職員から本件預金を含めた本件被相続人名義の財産の申告漏れを指摘されると、上記(4)のロのとおり、

特段の弁明をすることなく当該事実を認め、修正申告の勧奨に応じて修正申告をしている。

●本件相続人が、本件預金を故意に本件申告の対象から除外する意図があったものとは認め難い。

まず、本件裁決で争点となったのは、「故意による隠蔽又は仮装」があったのかという点です。

そして、本件は、預金口座の内容を知りながら税理士に告げなかった、という「隠蔽又は仮装の積極的行為がない」事例となります。

このような場合の判断基準は、

「当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をした」
(最高裁平成7年4月28日判決)

かどうか、です。

そして、この判断基準の場合の事実認定のポイントは、

●故意が推認されるような行為があったか

●故意と矛盾するような行為があったか

ということになります。

このポイントからすると、上記裁決では、

「故意があったとするならば、このような行為をするはずなのに、していない」

というような、故意と矛盾する行動を複数指摘していることがわかります。

重加算税を指摘された際は、このような観点から重加算税の適否を判断していただければと思います。

今回は、以上です。

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