今回は最高裁判決前の下級審裁判判例を読む時の注意点(代理人の行為)編です。

これは平静12年の裁決事例です。
事案、請求人の税務代理を委任した税理士が、平成7年分の請求人の不動産所得について、本件青色決算書に架空の必要経費を多額に計上することにより、不動産所得に多額の損失があったごとくに見せかけ、その結果として不正に所得税を免れていた。

隠ぺい又は仮装があるとして、重加算税賦課決定がされました。

裁決、「重加算税は、納税義務違反の発生を防止し、徴税の実を挙げるため違反者に対して課される行政上の処置(措置)であり、代理人等の第三者を利用することによって利益を享受する者は、それによる不利益をも甘受すべきであるとの原則が適用されるべきであるから、第三者に申告を一任した場合には、その者の申告行為は納税者自身がしたものと取り扱われ、その者が国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部の隠ぺい又は仮装を代理人が行った場合には、納税者本人にもその効果が及ぶと。

そのため、代理人を利用した場合には直ちにその効果が及ぶとされております。

これを本件についてみると、代理人である税理士の行為は、平成7年分の不動産所得について、青色決算書に架空の必要経費を多額に計上することにより、不動産所得に多額の損失があったごとくに見せかけて、その結果として不正に所得税を免れていたということなので、税理士に申告手続等を一任した請求人が、隠ぺい、仮想行為をしたと評価できます、ということなので、重加算税は適応だということになりました。

しかしながらこの後、税理士の隠ぺい、仮想に対する最高裁判決が出ております。
以下の場合には、隠ぺい仮装行為を納税者本人の行為と同視できるとして、重加算税の賦課要件を満たす、ということです。本人の行為と同視できるかどうかを問題にするということです。

前述では、税理士に一任した場合には直ちに本人の行為と同視できると判断されたということになります。
最高裁(1)から(4)があります。
(1)納税者において当該税理士が隠ぺい仮装行為を行うこと若しくは行ったことを認識し、又は容易に認識することができたことということなので、本人が税理士が隠ぺい、仮想行為をするということを認識したかあるいは容易に認識できた場合でないといけない。

(2)法定申告期限までにその是正や過少申告防止の措置を講ずることができたことということなので、知っていてかつ防止措置ができること

(3)納税者においてこれを防止せずに隠ぺい仮装行為が行われたということなので、知っていてかつ防止できたのに防止しなかったということ

(4)に基づいて過少申告がされたということになりますので、先程の裁決事例です。
この最高裁判決後例えば今だったらこの最高裁判決に当てはめる必要が出てくるということなので、税理士の行為が直ちに本人の行為と同視されるわけではなく、これらの(1)から(4)について更に審議をして、事実認定をしなければならないということになります。

そのため、最高裁判決がある場合には、その前の裁決事例、あるいは裁判事例の判決はそのまま適用できるかどうかは分からないと。

最高裁判決の要件に当てはめて考えないといけないということが原則となりますので、最高裁判決が覆る場合には別ですが、そうでない限りは原則として最高裁判決で考えていくということになりますので、この点ご注意いただければと思います。

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