今回は、最後まではお手伝いできなかったのですが、診療所を医療法人化してほしいと相談されたときの事例です。
ある司法書士さん経由の税理士さんからのご相談ということで、ある医療機関に行きました。
趣旨としては、クライアントの医療機関として個人の診療所があるので、それを医療法人化してほしいというご相談でした。
我々はご相談のあるクリニックに行く前に必ず調査します。
都道府県ごとの医療機能情報提供制度を利用して、診療所の所在地や開設者などを調べます。
また、厚生局のデータで、施設基準には何を出している、いつ保健所からの指定を受けているのかなどのスペックをいろいろ調べていきます。
そのときも調べてから伺いました。
当日、最初にでてこられた先生が、妙にイメージしていた先生とは違ったのです。
開設したのは、もう20年くらい前でしたので、どう考えても先生がそんなに若いはずはないのですが、“院長です”と名刺渡してくださった先生が、妙に若いのです。
厚生局のデータなどから推測すると、その先生のお父さんが院長のはずなんです。
それで“おかしいなぁ”と思って、聞いてみたら、やはり、その院長という名刺を持っている若先生は、去年からそのクリニックにいる先生なんです。
おととしまでは先代のお父さんがずっとやっていらして、去年から若先生が診療をされていたのです。
少なくとも保健所への届け出や厚生局の保険所許可の指定などは、大先生が受けているということです。
それで、医療法人化してほしいというご依頼だったものですから、「すいません。ちょっと決算書をいただけますか?」とお願いしましたら、決算書では、事業主が若先生になっているのです。
なぜか若先生が事業主になっているということを税理士さんに聞いたら、税理士さんが、「一昨年から若先生がやっていらっしゃるから、若先生が申告しなければだめだろう」と言うんです。
そうすると医療機関としては大先生がやっていて、大先生が開設者であり管理者なのですから、大先生は医療法上は 管理者としてずっと常勤でいなければけないのですが、ここ2年ぐらい、大先生はほとんど出てきていないのです。
要するに医療上の開設者と税法上の事業主が違っていたという事例でした。
僕もあの頃は若かったので、税理士さんに「こんなことやっていいんですか?」と言ってしまったところ、「実質やってのはこっちの先生だからこっちが申告しなければ駄目なんだ」と税理士さんが怒ってしまって。
こちらとしては、「開設者は大先生なのだから、大先生でなければ駄目でしょう」という話になってしまい。
医療法人を作る時は、過去の決算書、既存の診療所を法人化する時は、過去の決算を行政に出すので、それを出発点として、 今こういう内容なので、これを法人化してもよろしいかという、お伺いするのです。
そんな形の審査になるので、この診療所は決算書を出せない状態だったのです。
名前一文字違いだったので、見落としてくれるんじゃないか、という、ずるい希望もなくはないのですが、どうせバレます。
最終的には、税理士さんが怒ってしまって、それきりになってしまったのですが。
診療所の開設者が変わる場合は、開設者の変更ではなく、廃止して新たなに開設するのです。
大先生の診療所を廃止して、若先生の診療所を開設するという。
たまたまその日付が連続していて、同じ看板を引き継いでいる、と言うだけの話ですから、まったく別の医療機関なのです。
この建て付けを税理士さんがイメージされてなかったのですね。
医療機関でなにか変わったことがありましたら、お早めにご相談いただけると、こんなことならなくて良かったのかなと思います。