今回は、特別受益についてです。
特別受益は、遺産分割において、
(1)遺贈された財産
(2)婚姻や養子縁組のために贈与された財産
(3)生計の資本として贈与された財産
を相続財産に持ち戻す制度です。
そして、その評価時点は、相続開始時点となります。
そうなると、被相続人の事業を長男が承継するため、債務超過の時に同族会社の株式を長男に贈与し、その後、長男の特段の努力によって事業がV字回復し、相続時に株式の価値が1億円になっていたとします。
そうすると、長男の特段の努力で株式の価値を高めたにもかかわらず、1億円が相続財産に持戻されて遺産分割が行われることになります。
長男としては不公平感は拭えません。
このような事態を避ける方法があります。
一つは、株式を贈与ではなく、売買にする方法です。
特別受益の対象となるのは、贈与か遺贈された財産です。
そこで、債務超過で無価値な株式であっても、50万円とか100万円で売買してしまう方法です。
これで特別受益の対象からはずれます。
・債務超過で株式の価額が0円である評価書
・株式売買契約書
・譲渡承認について取締役会など法律に基づいた機関決定及び議事録の証拠を残しておくことが重要です。
もう一つは持戻免除の意思表示をしておくことです。
この意思表示でも持戻の対象からはずれます。
なお、遺留分の関係では、相続人に対する贈与については、相続開始前10年間にされたものに限り、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入することとされています。
ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年より前にされたものであっても、遺留分算定のための財産の価額に算入することとされています。