【この記事の著者】
公認会計士・税理士 佐藤信祐先生
掲載日 2023/4/19

平成29年度税制改正により、単独新設分割型分割及び株式分配に対してスピンオフ税制が導入されました。

スピンオフ税制が導入された制度趣旨として、

「『移転資産に対する支配が再編成後も継続している』かどうかについて、現行の組織再編税制は、グループ経営の場合には、グループ最上位の法人がグループ法人及びその資産の実質的な支配者であるとの観点に立って判断しているという側面もあり(例えば、適格組織再編成における株式の保有関係に関する要件)、この考え方を踏まえれば、グループ最上位の法人(支配株主のない法人)の実質的な支配者はその法人そのものであり、その法人自身の分割であるスピンオフについては、単にその法人が2つに分かれるような分割であれば、移転資産に対する支配が継続しているとして、適格性を認めうると考えられます(「平成29年度税制改正の解説」317-318頁)。」

と説明されています。

ただし、グループ最上位の法人を実質的な支配者として、移転資産に対する支配が継続していたとするのは、やや強引な説明であったように思われます。

単独新設分割型分割について、このような説明が仮に可能であったとしても、株式分配を行った場合には、完全子法人株式が切り離されることから、グループ最上位の法人自身の分割と同視することは困難であると考えられます。

さらに、令和5年度税制改正では、令和5年4月1日から令和6年3月31日までの間に産業競争力強化法の事業再編計画の認可を受けた場合には、現物分配の直後に完全子法人の発行済株式総数のうち20%未満を保有していたとしても、スピンオフ税制の対象に含まれることになりました(このようなスピンオフを「パーシャルスピンオフ」といいます)。

さすがに、これを法人税法に取り込むことは困難であったため、租税特別措置法に規定されています。

ただし、前述のように、そもそもスピンオフ税制そのものが、「移転資産に対する支配の継続」により説明することが困難であったため、租税特別措置法に規定されるべきだったと思われます。

そもそも「移転資産に対する支配の継続」という考え方は、法人の結合には合致した考え方ですが、法人の分離には合致した考え方ではありません。

理論上は、法人の結合としての組織再編税制と法人の分離としての組織再編税制を分けて整理すべきであるため、今後の税制改正により、組織再編税制が見直される可能性もあると思われます。

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