税理士の先生より「一部株主を除いた株主総会の解散決議」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。
質問
同族会社の業績が悪く債務超過状態で、適任の後継者もいないため、法人を解散・清算して、その後は個人事業として細々と事業を行いたいと考えています。
・発行済み株式総数 10,000株
・株主
A:5,000株
B:2,000株
C:2,000株
D:1,000株
・相続争いで、ABグループとCDグループが対立状態になり、険悪な仲です。
CDに解散決議の株主総会通知を出さないで、株主総会を開催し、決議を可決することはできますか。
解散決議の株主総会通知を出さない場合、解散決議を行った場合の法的リスクにどのようなものがありますか。
あるとすればどのようなものですか。それを回避するためにはどのようにすれば良いのですか。
議決権を有する株主の 2 分の 1 が出席する株主総会を開催し、出席株主の 3 分の 2 以上の賛成があれば良いのでしょうか。
総会議事録には、どのように記載すれば良いでしょうか。
回答
1 株主総会決議取消事由該当性
一部の株主に総会通知を出さないで株主総会を開催し、決議をすると、決議取消事由あるいは、決議不存在事由となります。
決議取消事由にとどまれば、決議から 3 か月以内に提訴されなければ決議取消訴訟を提起することはできなくなります。
しかし、決議不存在事由であれば、いつまででも提訴することができます。
過去の事例では、一部株主が勝手に会合した場合(東京地裁昭和30年 7 月8 日判決)、42パーセントの株主に招集通知が漏れた場合(最高裁昭和33年10月 3 日判決)などで、株主総会決議が不存在だとされた裁判例があり、リスクがあります。
一部株主に通知を出さずに解散決議を行い、清算した場合、それによって株主に損害が発生した、と言える場合には、清算人に損害賠償責任が発生することになります。
本件で、株主にどのような損害が発生するかはわかりませんが、損害が観念できないようであれば、損害賠償請求は成り立ちません。
株主総会招集通知は株主全員に通知を出さないといけないことは法律の命ずるところですので、回避方法はありません。
決議要件は、定款に特別の定めがない場合には、議決権を有する株主の過半数が出席し、出席株主の3分の2以上による賛成となります。
解散に関する株主総会議事録は、通常の株主総会議事録で「第○号議案承認の件 議長より、......を理由として、当会社を解散すること、○○を清算人に選任することを説明し、議場に諮ったところ、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成により、本議案は原案どおり承認可決された。」
等の記載をしていただければよろしいかと思います。
2 債務超過の場合の破産手続開始
解散した清算株式会社が債務超過の場合には、・・・
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