税理士の先生より「顧問先の言うとおりに経費計上して税務調査で否認された場合の税理士の責任」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

顧問先が、スポーツカーを 3 台、プレジャーボートを 1 台所有しています。

社長は、事業上の業務や接待等で使用しているため、すべて100%経費(減価償却や消費税の仕入税額控除)扱いして欲しいと言っています。

私の見解としては、事業の内容から考えて、100%事業とは言えないと考えています。

この場合、社長の言うとおりにすべて100%経費計上(減価償却や消費税の仕入税額控除)をし、その部分が税務調査等で否認をされたとき、税理士として懲戒処分の対象となるでしょうか。

また、損害賠償リスクについてはどうでしょうか。

回答

まず、本件スポーツカーやプレジャーボートが誰の資産か、を認定する必要があります。

これらが、社長の個人的趣味により購入したもので、法人の資産ではなく、個人資産である、と認定される可能性を検討することになると思います。

実際、国税不服審判所平成 7 年10月12日裁決(TAINS F0-2-048)は、同様の事案において、次のように判断し、行為計算否認規定(法人税法132条 1 項)により、モーターボートを個人の資産と認定しました。

「本件船舶は代表取締役会長個人の用に供する目的をもって購入されたものとみるのが相当であり、その維持管理費用及び減価償却費を損金の額に算入する行為を容認した場合には法人税の負担を不当に減少させる結果になることは明らかであり、減価償却費を損金の額から減算したことは相当であり、また、船舶の取得のために支出した金員については、個人に対し臨時的に経済的利益を供与したことになることから、代表取締役会長に対する賞与と認定した原処分は相当である。」

検討の結果、法人の事業資産とした場合、社長個人が私的に利用する場合があるのであれば、当然支払うべき使用料相当額の利益を得ている、と認定される可能性があります(国税不服審判所平成24年11月1日裁決、TAINS J89-3-12参照)。

このように、本件は、後日の税務調査により否認される可能性がある税務判断ということになります。

その場合には、①懲戒処分の問題、②税理士損害賠償の問題、の2つが問題となります。

懲戒処分については、・・・

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