税理士の先生より「相続財産評価額の説明義務」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

以下の件について、ご意見お聞かせください。

私は兄の会社の顧問税理士をしていますが、今回相談の相続には関与していません。

相続は別の税理士が関与しています。

1 .事実関係

⑴ 兄弟間( 2 名)で遺産分割について裁判になっている。
⑵  2 人で均等に分ける合意をし、遺産分割が確定( 3 年前)。
⑶ 遺産は、土地建物と現金預金
⑷ 兄は土地建物を相続、弟は現金預金のみ相続

原因は、土地建物の時価と相続税評価額の乖離。つまり兄は実際より低い価額で評価された財産を相続し、結果的に自分(弟)は、相続した現金預金が少なかった、というものです。

2 .質問事項

こうした争いを実際に目にすると、申告にあたっての評価額について、どこまで税理士として説明する義務があるのかと心配しています。ケースバイケースとは思いますが、先生のご意見をお聞かせください。遺産分割協議に税理士が関わってよいかという問題もありますが。

回答

まず、税理士が遺産分割協議を指導していないことを前提として回答したいと思います。

相続税申告業務において、税理士が相続税評価額をどの程度説明すべきかについてですが、「財産評価基本通達」に従った評価をしているのであれば、「財産評価基本通達に従って評価した」と説明すれば、特段の事情がない限り、説明責任を果たしたものと考えます。

名古屋地裁平成16年 8 月30日判決は、「通達の内容が法令の趣旨に沿った合理的なものである限り、これに従った課税庁の処分は、一応適法なものであるとの推定を受ける」としています。

したがって、税理士が通達に従って評価したのであれば、過失を認定されにくい、ということになります。

しかし、通達によらない評価をするのであれば、否認の可能性の説明と、評価が適正であることの立証資料を整えておく必要が生じるものと考えます。

通達によらない評価をして、後日、税務調査で否認され、損害を被ったとして税理士が損害賠償請求された事案において、千葉地裁平成9年12月24日判決は、税理士が後日税務署に否認される可能性について認識していたものの、依頼者が不動産について精通する者であると考えていたことから、否認される可能性について説明せず、時価を証明するため不動産鑑定士による鑑定書の作成を助言しなかった、という点を捉えて、税理士の損害賠償責任を認めています。

以上に対し、税理士が遺産分割協議に関与している場合について説明します。

まず、税理士が・・・

この記事の全文については、税理士を守る会に入会すると読むことができます。

▶初月無料の「税理士を守る会」の詳細はこちら(393の税理士事務所が入会)

おすすめの記事