税理士の先生より「契約形態の違いによる税務書類の作成上の注意点」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。
質問
委任契約・請負契約にかかわらず、税理士が申告書を作成した場合、申告書に署名が必要であるとの認識なのですが、業務の性質上、申告代理も行うことが多いと思います。
この場合、いずれの契約においても、税理士署名のある申告書、代理申告の事実があり、対外的にはどちらの契約にて行われたか判断はできないと思いますが、成果物としての形式は同じであっても、契約によってその責任範囲は異なるという解釈でよいのでしょうか。
また、税務代理についてですが、独占業務として申告書の作成と税務代理がそれぞれ規定されていますが、申告書の作成は税務代理に内包されるという認識でおります。
請負契約より申告書の作成および申告を行う場合にも、これらについて税務代理を行うことになると思いますが、あくまで請負として代理行為を行ったという考え方でよいのでしょうか。
つまり、税務代理≠委任という認識でよろしいのでしょうか。
加えて、代理権限証書の添付はどのような効力があるものなのでしょうか。
単に課税庁側にとって、納税者の代理税理士を確定させるだけのものなのでしょうか。
たとえば、申告書の作成および申告は代理して行ったものの、代理権限証書を添付しないことが実際に可能ですが、これは単に代理権限証書の添付漏れという扱いになるのでしょうか。
それとも(矛盾するようにも思えますが)「私は代理人ではない」と明示することになるのでしょうか。
回答
今回は、「委任契約」「請負契約」「署名」「税務代理権限証書」の問題として認識しました。
1 署名について
まず「署名」の点を解決しておきたいと思います。
税理士法33条は、次のように規定しています。
税理士法33条
1 税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において、租税に関する申告書等を作成して税務官公署に提出するときは、当該税務代理に係る税理士は、当該申告書等に署名押印しなければならない。この場合において、当該申告書等が租税の課税標準等に関する申告書又は租税に関する法令の規定による還付金の還付の請求に関する書類であるときは、当該申告書等には、併せて本人(その者が法人又は法人でない社団若しくは財団で代表者若しくは管理人の定めがあるものであるときは、その代表者又は管理人)が署名押印しなければならない。
2 税理士又は税理士法人が税務書類の作成をしたときは、当該税務書類の作成に係る税理士は、当該書類に署名押印しなければならない。
そこで、税理士が税務書類を作成した場合には、申告代理をしようとしまいと、また、委任契約であろうと請負契約であろうと、税務書類に署名押印しなければなりません。
この規定の趣旨は、税務書類を作成した者の「身分及び責任の所在を明らかにしておく必要がある」ためとされています(『新税理士法第4版』日本税理士連合会編)。
申告代理をするかどうかとは無関係です。
したがって、署名は、税務書類を作成した税理士の身分および責任の所在を明らかにするだけのものであり、当事者間の契約関係に影響を及ぼすものではない、ということになります。
なお、契約関係には影響を及ぼしませんが、「誰の意思に基づいて作成されたか」という事実認定の場面では、当該税理士が作成したものという強い推定力が働く証拠となります。
2 代理権限証書について
次に、代理権限証書ですが、これは、その名のとおり、代理権限を証明するための書類となります。
そして、代理権限証書については、過去の判例で、「税理士がその業務に関する委任状を徴求したことは、その委任状に記載の委任事項についての業務を受任したものというべきである。」(東京高裁平成7年6月19日判決(TAINS Z999-0009))とされていますので、代理権限証書を徴求した場合には、原則として、「委任契約」が成立したものと認定される傾向にあると思われます。
3 請負契約について
ところで、・・・
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