税理士の先生より「税務調査で歯科医師のカルテは質問検査権の対象になるか」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

歯科医院の税務調査で、患者のカルテの開示を求められた場合、個人情報保護法を根拠として拒否ができますか。

できない場合には税務署側に提示の要求ができるとの規定があるのでしようか。

回答

本件は、質問検査権と守秘義務の衝突の問題かと思います。

歯科医師のカルテが質問検査権の対象である「帳簿書類その他の物件」に該当するかどうかについては、東京地裁平成元年 9 月14日判決(TAINSZ173-6353)は、これを肯定し、質問検査権の対象としています。

そして、質問検査権については、「質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」(最高裁昭和48年 7 月10日決定、租税判例百選第 6 版111)としており、租税職員の判断が尊重されています。

ただし、国税通則法74条の 2 第 1 項は、「調査について必要があるとき」に質問検査をすることができると規定しています。「必要があるとき」とは、租税職員が必要と判断したときという意味ではなく、客観的な必要性が認められるとき、という意味です。

他方、歯科医師には守秘義務があり、秘密を漏洩した場合には、刑法134条で刑罰が科せられます。

そこで、質問検査権と守秘義務が衝突する場面において、どう判断すべきかについては、弁護士の守秘義務が問題となった、大阪高裁平成13年12月19日判決が参考になります。

同判決は、
「弁護士が税務調査に対して、上記のような協力義務を負うとした場合、その過程で守秘義務に含まれる事項が税務署職員に知れる可能性はあるが、そもそも守秘義務を負う弁護士に対しても所得税法234条に基づく質問調査権の行使が容認されているのであるから、守秘義務に含まれる事項が税務署職員の知るところとなることは法によって当然予定されているものとみるほかなく、本件を含め一般に税務調査の対象となる帳簿書類は、依頼者からの金員支払いの事実等経済的な取引の側面に関するものに限られ、これらの事項にも守秘義務が及ぶとしても、その保護の必要性はその限度で制約を受け、さらに、税務署職員も調査の過程で知り得た事項については守秘義務を負い、その義務に違反した場合には、所得税法によって国家公務員法上のそれよりも重い罰則が課せられるのである(所得税法243条等、なお国家公務員法109条12号)。よって、弁護士に対して上記程度の義務を課したとしても、その業務に過大な制約を加えるものであるとはいえない。」
としています。

したがって、・・・

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