被相続人甲には、以下の3名の法定相続人がいます。

・乙(姉)
・丙(妹)
・丁(弟)

3名とも現在も生存しています。

甲は生涯独身であったため、高齢になってからは、乙および乙の長男Aの家で同居し、乙とAの2人が甲の身の回りの世話をしていました。

その後、甲の世話をすることが困難になったため、甲は介護施設に入居しましたが、入居後も乙とAは施設に出向いて甲の対応をしていたそうです。

また、実際にはAには妻や子どもがおり、Aの家で同居している(または同居していた)ため、Aの妻や子どもも甲の世話に関与していたようです。

その他、本件の関係者として、以下の者がいます。

・丙の長男B
・丙の次男C
・丁の長男D

【公正証書遺言の内容】

甲は、公正証書遺言を作成していました。

その内容は、以下のとおりです。

・第1条:記載された不動産(アパート)をAに遺贈する。
・第2条:記載された不動産(アパート)をB、C、Dに各3分の1ずつ遺贈し、共有とする。
・第3条:第1条および第2条に記載された財産以外の一切の財産について、Aに10分の1、B、C、Dにそれぞれ10分の3ずつ遺贈する。

ところが、甲の死亡後に公正証書遺言を確認したところ、第1条および第2条に記載されていない家屋(以下「イ」といいます。)が存在することが判明しました。

甲が公正証書遺言を作成した時点で、この家屋の存在を失念していた可能性もありますが、現在となってはその事情は分かりません。

なお、イの共有持分は、以下のとおりです。

・甲:14分の2
・乙:14分の9
・A:14分の3

現在、または過去において、甲、乙、Aの3名がイに居住しています。

【現在の相続人・受遺者間の合意】

相続人である乙、丙、丁ならびに受遺者であるA、B、C、Dの全員は、イについて、甲が有する14分の2の共有持分をAが取得することで合意しています。

また、イを除く第3条記載の財産についても、乙、丙、丁がそれぞれ3分の1ずつ取得することで合意しています。

なお、イ以外の不動産は存在せず、第3条に記載されたイ以外の財産は金融資産です。

ただし、これらについては、現時点では相続人・受遺者間で口頭で合意しているのみであり、書面は作成していません。

甲の遺産については、相続人および受遺者の間で特にトラブルはなく、上記の分割案についても全員が合意しています。

また、税負担の問題を考慮し、Aがイの甲持分を贈与ではなく、できるだけ遺贈(相続)によって取得できる方法を希望しています。

【質問】

① イの家屋について、甲が有する共有持分をAが相続(遺贈)によってすべて取得し、登記上もAの単独名義とするための方法についてお伺いします。

具体的には、公正証書遺言第3条について、

・イを除く財産については、A、B、C、Dがそれぞれ遺贈を放棄する。
・イについては、B、C、Dが遺贈を放棄する。

という内容の文書を作成し、これを公正証書遺言と併せて使用することで、イの甲持分をAが取得することは可能でしょうか。

また、この方法が可能である場合、遺贈を放棄する旨の文書について、どのような内容・文案とすればよいでしょうか

② イ以外の金融資産について、乙、丙、丁がそれぞれ3分の1ずつ取得する方法についてお伺いします。

上記①のような遺贈に係る放棄書を作成しなくても、相続人である乙、丙、丁の3名で新たに遺産分割協議書を作成するだけで、金融資産を3分の1ずつ取得することは可能でしょうか。

この場合、遺産分割協議書には、

・相続人3名が公正証書遺言の存在を認識していること。
・そのうえで、相続人3名が協議を行い、甲の遺産について分割すること。

といった内容を記載することを考えています。

このような遺産分割協議書を作成することで、遺言の存在を前提としつつ、金融資産を相続人3名で分割することは可能でしょうか。

③ 遺贈に係る放棄と遺産分割協議によって、イをAが取得する方法についてお伺いします。

公正証書遺言第3条に記載された財産について、まずA、B、C、Dがすべて遺贈を放棄する旨の文書を作成し、そのうえで遺産分割協議書を作成して、イの甲持分を改めてAが取得するという方法は可能でしょうか。

この場合、Aによるイの取得は、遺言に基づく遺贈ではなく、遺産分割協議による取得という扱いになるのでしょうか。

また、甲の生前にAが甲の世話をしていたという事情もありますが、このような経緯を踏まえてAがイを取得する場合、「特別寄与」による取得として扱われる可能性があるのでしょうか

③の方法が可能である場合には、遺贈放棄の文書および遺産分割協議書について、どのような内容・文案とすればよいかについてもご教示いただけますでしょうか。

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