遺言書がある場合に、法定相続人全員で協議して、遺言によらずに遺産分割をすることがあると思います。
次のようなケースを考えてみます。
相続人:長男A、二男B
遺言書で、自宅及び現預金の全てを長男Aが取得する旨記載がある。
ABで話し合い、現預金については、ABで分けようということになった。
この場合、
「自宅のみ遺言書で長男Aが取得することにして、現預金部分を遺産分割協議をすることが可能ですか?」
と質問されることがあります。
これは、場合によります。
(1)特定遺贈の場合
特定遺贈の場合には、遺贈ごとに放棄することができますので、現預金部分のみ遺贈を放棄し、AB間で遺産分割をすることが可能です。
(2)包括遺贈の場合
資産が特定されていない場合には、個別に放棄することができませんので、包括遺贈の放棄をし、その上で全体の遺産分割することになります。
包括遺贈の放棄は、家庭裁判所に行いますが、実務上は、特に手続を経ることなく、「遺言によらない遺産分割」をすることもあります。
(3)「相続させる」と記載がある場合
この遺言の場合は、遺産分割方法の指定と解されており、被相続人の死亡によってただちに遺言の効力が生じます。
したがって、この効力を排除するには、相続放棄をするしかありません。
しかし、そうすると、相続自体ができなくなってしまうので、相続放棄はせず、全体について、AB間で遺言によらない遺産分割をすることになります。
さて、この「遺言によらない遺産分割」は、実務ではよく行われていると思いますが、法的な理解と税務上の運用では異なっています。
この点について理解しておいた方がよいと思いますので、別の機会に解説したいと思います。
今回は、以上です。