今回は、税務調査で質問応答記録書にはどう対応すべきか? についてお話をしていきたいと思います。
【質問応答記録書とは?】
税務調査での対応で、「質問応答記録書」というものが出てきたことがあると思います。
質問応答記録書というのは、租税職員が質問し、納税義務者等が回答した際に、その内容を記録し、記録後に回答者に対して署名押印を求めるという書類です。
以前は、申述書、確認書、供述書、嘆願書などの名称で書かされたものですが、平成25年頃から、質問応答記録書に代わっています。
質問応答記録書の内容を調べるには、行政内部の文書である行政文書があります。
平成25年6月、国税庁課税総括課作成の「質問応答記録書作成の手引」(以下、「手引」といいます)というものがあり、この中に次のようなことが書いてあります。
「事案によっては、この質問応答記録書は、課税処分のみならず、これに関わる不服申立て等においても証拠資料として用いられる場合がある。」
「事案によっては、納税義務者等の回答内容そのものが課税要件の充足のための直接証拠となる事案や、直接証拠の収集が困難であるため、納税義務者等の回答内容を立証の柱として更正決定等をすべきと判断する事案もある。」
証拠が乏しい場合に、この質問応答記録書が強力な証明手段になる可能性があるということです。
つまり、質問応答記録書は、作成されると裁判の証拠資料にもなるということです。
従って、この質問応答記録書に記録された内容はとても重要になります。
そして、この質問応答記録書は、完成前に訂正するのはいいのですが、完成したら訂正してはいけないルールになっています。
また、写しは納税者に交付されません。
ですから、慎重に対応して、記憶違いが記録されないように注意する必要があるということになります。
【質問応答記録書の内容の確認】
では、どのように内容を確認したらいいのかというと、手引には次のように書いてあります。
「質問応答記録書の作成後、回答者に対し、同人の拒否などの特段の事情のない限り、質問応答の要旨に記載した内容を読み上げ、内容に誤りがないか確認させなければならない。一層の記載内容の信用性確保のため、併せて、提示し、閲読してもらうことが望ましい。」
読んで、聞かせてもらって、よくわからないときは、「見せてください」と要求することになります。
「見せられません」と言われたら、「手引に見せるのが望ましいと書いてあります」と言えば見せてくれると思います。
間違いがある場合には、その場で「加除訂正の申立」をします。
これには応ずることになっています。
ここで訂正しておかないと、いったん完成してしまうと訂正してはいけないことになっているので注意してください。
【署名押印を拒否した場合は?】
納税者による署名押印は義務ではないので、求められても署名押印はしなくていいのですが、では署名押印しないとどうなるのでしょうか。
手引には、次のように書いてあります。
「但し、奥書で、回答者が署名押印を拒否した旨を租税職員が記載し、署名押印することによって書類としては完成することになるので、納税者による署名押印は、書類の完成のための要件ではない。」
「税理士や弁護士に署名押印を求める必要はない」と書いてあるので、税理士が署名を求められたとしても、「いえ、署名押印を求める必要はないと手引に書いてありますよね」と言えばいいということになります。
仮に、間違った質問応答記録書が作成されてしまった、記憶違いだったことが後でわかった、という場合には、まず改めて租税職員調査担当官に、「この間の質問応答記録書に記憶違いがあったので、改めて質問応答記録書を作ってください」と、お願いをすることになります。
それで応じてくれれば良いですし、応じてくれなければ、証拠を残しておく必要があるので、内容証明郵便等でその税務署宛てに書面を送ります。
そこに、「先日の質問応答記録書は●●●と書いたけれども、じつは記憶違いで正しくは〇〇〇でした、間違ってしまった理由は▲▲▲と△△△ということを混同してしまったためです。」というようなことを書いて送っておくことによって証拠化することができます。
今回は、税務調査の段階で作成される質問応答記録書について、簡単に触れて説明をしました。
詳しくは、手引を「TAINS」から引っ張って、よく調べていただければと思います。