執筆:弁護士・税理士 谷原誠
税理士を守る会
会計業務委託契約書/会計業務再委託契約書/再委託に関する合意書など
最近、立て続けにご相談を受けたため、税理士業務の再委託に関する法的な正確な理解を共有したいと思います。
特に、記帳代行業務を外部に再委託するケースについて、注意すべきポイントを整理します。
記帳代行業務の再委託は
許されるのか?
委任契約に基づく再委託の原則
税理士と顧問先の契約は、通常「委任契約」として解釈されます。
この場合、民法の以下の規定が適用されます。
民法第644条の2第1項
「受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。」
つまり、顧問先の許諾がなければ、再委託は法的に認められないということになります。
守秘義務との関係
記帳代行会社は第三者に該当
記帳代行会社は、顧問先にとっては第三者です。
そのため、税理士が顧問契約に基づき得た情報を正当な理由なく第三者に漏らすことは、税理士法上の守秘義務に違反することになります。
税理士の「業務上の都合」は、正当な理由には該当しません。
したがって、民法上の再委託の制限に加え、税理士法上の守秘義務の観点からも、顧問先の事前許諾が必要となるのです。
顧問先の許諾が必要不可欠
以上の理由から、記帳代行業務を外部に再委託する際には、必ず顧問先の許諾を得る必要があります。
なお、「税理士を守る会」会員の先生には、再委託に関する許諾条項を含む契約書のひな形をご提供していますので、ご活用いただければ、これらの問題をクリアすることが可能です。
再委託によるリスク:
ミスの責任は税理士に
税務申告ミスと損害賠償責任
記帳代行会社がミスをしたことにより、税務申告に誤りが生じた場合、顧問先と契約関係にあるのは税理士です。
そのため、
- ミスの責任は税理士が負う
- 税理士が損害賠償を請求される可能性がある
というリスクもあります。
まとめ
- 記帳代行の再委託には、顧問先の事前許諾が必須です
- 税理士法・民法双方の観点から、無断再委託は違法となる可能性があります
- 再委託によるミスの責任も、最終的には税理士が負うことになる点に注意が必要です
税理士を守る会
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