【関連解説】事業所得と雑所得の区別と判断基準(パート1)

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    今回は、「事業所得と雑所得の区別と判断基準」について、多くの判例を見ていきたいと思います。

    今回は、「事業所得と雑所得の区別と判断基準」のチャプター2となります。

    チャプター1からの続きになるので、いきなり判例から始まります。

    必ずチャプター1から読んでください。

    【チャプター1】

    【雑所得と判断された裁判例】

    「大阪地裁平成23年12月16日判決」(TAINS Z261-11835)

    (事案)
    医師が、服飾レンタルから生じた所得を事業所得に該当し、損失を損益通算の対象として申告したところ、税務署長から当該所得等は雑所得に該当するとして更正された。

    結論は、雑所得と認定されています。(控訴棄却)

    判断基準は、もう何度も出てきていますが、次のものです。

    「自己の計算の危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得であるか否かによって判断される。」

    では、本件ではどのような事情があったのか。

    ・医師業を本業として、相当程度安定した収入を得ており、本件服飾レンタルは、多忙な医師業の合間の僅かな時間に、10人程度の固定客を相手に行っている。
    ・顧客との間で領収書や請求書も発行しておらず、収支に係る帳簿類も作成せず、特段の宣伝広告も行っていない。
    ・事業としての社会的客観性を有しているとは認め難く、また、自己の危険と計画による企画遂行性があるとも認められない。
    ・むしろ、自己の服飾費を減価償却費として損金算入することにより、節税効果を得ることを目的として、事業の外観を備えるために服飾レンタルが行われていたとみるのが自然である。

    として、事業とは認めなかったということになります。

    「東京地裁平成21年7月31日判決」(TAINS Z259-11255)

    (事案)
    大学教師・評論家が、給与所得及び雑所得(原稿料・講演料等)を申告していたところ、税務署長から、インターネット上のウェブサイト収入は、原稿料等とあわせて事業所得に該当するとして更正処分等を受けた。

    結論は、雑所得ではなく、事業所得であると認定されています。(控訴棄却、上告棄却・不受理)

    本件は、本件サイトの運営主体は人格のない社団等Oであり、その収入はOに帰属する、というのが納税者の主張でした。

    では、本件ではどのような事情があったのか。

    「原稿料、講演料」

    本件では、原稿料、講演料は事業所得とされています。

    ・大学教師としての給与収入を上回る本件原稿料等収入を、多岐にわたる取引先から相当回数の支払を受けることによって得ていた。
    ・これを生み出した原告の文筆、講演等の活動は、経常的に安定した状態にあったということができる。
    ・自らが運営主体となっている本件サイトにおいて、原告の著書の紹介及び販売並びに原告が行った講演会の模様を録画したビデオの販売に努めていたのであるから、その文筆、講演等の活動が営利性を有している。

    ということで、原稿料等の収入による所得は、社会通念上、事業所得に該当するとしています。

    一般的に原稿料は雑所得に該当すると判断することが多いと思いますが、自動的に雑所得になるわけではなく、あくまでも諸要素を総合的に検討して事業所得になる場合がある、ということになるので、ご注意いただきたいと思います。

    「インターネット収入」

    次に、インターネット収入です。

    ・本件サイトで著書紹介、講演ビデオ販売をしていた。
    ・有料ページで広く一般から購読会員を募り、特別な情報等を有料で提供していた。
    ・本件サイト収入の金額も、原告の給与収入の額にほぼ匹敵するか、それを上回る。
    ・融資を受けるに当たり、開業計画書の事業内容として「インターネットによる言論・情報提供業」を掲げており、開業後の利益金額の見通しを立てていた。
    ・「営利目的でやっているといっても、ノルマとか厳しいわけではないんだからさ。」と、本件サイトの運営が営利目的であることを肯定する趣旨の発言をしていた。

    ということで、本件サイト収入による所得は、社会通念上、事業所得に該当すると判断されています。

    本業の給与収入があったとしても、事業所得に該当する場合があるということです。

    なお、副業でも事業所得に該当するか、という点については、次のようにいっています。

    「ある所得が事業所得に該当するか否かの判断に当たっては、その者の本来の業務又は職業として行われる場合であると副業的なものとして行われる場合であるとを問わない」

    つまり、副業であってもそれが事業所得に該当する場合がある、ということになります。

    【国税不服審判所の裁決例】

    次に、国税不服審判所の裁決例も見ておきたいと思います。

    「国税不服審判所平成元年6月23日裁決」(TAINS J37-2-03)

    (事案)
    納税者が、7戸のマンションの売却を譲渡所得として申告したところ、税務署長が当該所得は雑所得であるとして更正した。

    納税者は、事業所得ではなく、譲渡所得と主張した事案ですが、裁決で事業所得ではなく雑所得と認定した理由は、次のとおりです。

    ・不動産の売買取引のあっせん及び仲介をしたことがない。
    ・その取引の仲介を不動産業者に依頼している。
    ・不動産取引のための雇人及び物的施設も有していない。
    ・別会社の代表取締役の地位にある。

    まず、譲渡所得ではないと認定して、その後、事業所得か雑所得かの認定のところで、これらの理由をあげて、雑所得であると認定をしました。

    「国税不服審判所平成13年9月14日裁決」(TAINS J62-2-06)

    (事案)
    主として建設工事業に従事している納税者が、競走馬の保有に係る所得を事業所得として申告したところ、税務署長から当該所得は雑所得であるとして更生された。

    なお、事業所得とされる判断基準は次のとおりです。
    「営利性、有償性、継続性、反覆性の有無のみならず、業務に費やした精神的・肉体的労力の程度、業務のための人的・物的設備の有無、投下資本の調達方法、その者の職業(職歴)、社会的地位、生活状況及び当該業務から相当程度の期間継続して安定した収益が得られる可能性が存するか否か等を総合的に検討し、一般社会通念に照らして判断するのが相当。」

    では、本件ではどう判断したのか。

    ・5年間に保有する登録馬の頭数は、登録期間が6月以上のものは1頭ないし3頭と少数である。
    ・競走馬の保有に当たり、特別な事業所や設備は設置していない。
    ・専属の従業員も雇用しておらす、その管理運営は専ら第三者に委託している。
    ・主として建設工事業の業務に基づく所得により生計を賄っており、競走馬の保有に係る所得は、5年間は専ら損失の金額を計上するのみであって継続的に相当程度安定した収益を得ていたものとは認められない。

    として、雑所得であると認定しました。

    「平成30年2月20日裁決」(TAINS F0-1-900)

    (事案)
    会社に勤務する納税者が、ネイルサロンを開業した。自宅のリビングの一部に作業用の机1台及び椅子2脚などを設置し、看板及び本件業務に係るメニュー表を作成して、配偶者を使用人としていたが当該ネイルサロンに係る所得を事業所得として申告したところ、税務署長から当該所得は雑所得に該当するとして更正された。

    では、本件にはどのような事情があったのか。

    ・多額の損失が3年連続して生じていることからすると、著しく経済的合理性に欠けるものであり、営利性は乏しい。
    ・積極的な広告宣伝がなく収支の赤字を改善する手段を講じていない。
    ・売上げを増大させるための事業計画の策定などを行っていない。
    ・勤務先における管理職という責任ある地位にて週5日、1日7時間30分程度従事しており、精神的及び肉体的労力の大半が勤務先の業務に費やされ、本件業務に費やすことができた精神的および肉体的労力は、勤務先における業務に支障を来たさない程度を範囲であった。
    ・勤務先から安定した給与を得ており、当該収入が各年分における所得の大部分を占め、納税者及び本件配偶者の生活の資とされた。

    として、雑所得であると認定されました。

    事業所得と雑所得で、判断に迷う事例があると思いますが、これだけ沢山の裁判例と裁決例を見ると、おおよその判断基準がわかってくるのではないかと思います。

    そして、事業所得に該当するか雑所得に該当するかについては、その取引の内容(原稿料や講演料等)から自動的に決まるのではなく、その具体的な事案の諸要素を総合して勘案し、社会通念に従って事業かどうかを決めるということになります。

    この点、注意して実務に生かしていただければと思います。

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