今回は、「株式会社の株式集約の方法」について解説をします。

内容としては、私ども、みらい総合法律事務所で執筆しています『税務のわかる弁護士が教える 税賠トラブルを防ぐ事業承継対策』という書籍の中から抜粋しています。

【株式集約における3つの方法】

顧問先等から、株式を集めたい、あるいは事業承継対策上株式を集約しないといけない、という相談を受けた場合にどう対応するか。

株式集約の方法についてはいくつかありますが、今回は次の3つを紹介します。

(1)譲渡制限株式の相続人等に対する売渡請求
(2)特別支配株主の株式等売渡請求
(3)株式併合

今回、手続きの細かいところまではふれませんので、実務で行う時は、法律の条文や実務書等を一つひとつ確認しながら行ってください。

概要について解説をしていきますので、これらを頭に入れておいていただいて、顧問先等から相談があった時にすぐに頭に浮かぶようにしていただければと思います。

【譲渡制限株式の相続人等に対する売渡請求】

譲渡制限株式の相続人等に対する売渡請求は、会社法第174条です。

・この制度は譲渡制限株式の場合のみ行えます。

・相続その他の一般承継の場合なので、特定承継の場合は行えません。

・定款の定めが必要になるので、特別決議を要します。

・会社に対して売り渡すよう請求するものなので、会社が買い取るということは財源規制=一定の純資産、配当財源がないとできません。

・一般承継を知った日から1年以内に行う必要があります。

・買い取る時の価額については協議が必要なのですが、請求から20日以内に裁判所に対して、その価額を決定するように請求することもできます。

【クーデターの恐れとは?】

この制度については、よく「クーデタの恐れ」ということがいわれるのですが、どういうことなのか見ていきます。

・まず、過半数株主が死亡した場合にこの定款があると、相続による一般承継(死亡による相続)なので、少数株主による株主総会が開かれることになります。

・相続人は、利害関係人となるので、この売渡請求の決議については議決権を有しない、ということになります。

・そうすると、少数株主だけで売渡決議が可決してしまって、会社が乗っ取られてしまう可能性がある、というのがクーデターの恐れ、というものです。

・ただし、財源規制があります。
そのため、過半数株主の株を買い取るには相当の財源がないとできない、ということになります。

なお、株式の準共有者(株式が相続される共同相続人に相続されると準共有とされる)の一部のみに対して売渡請求を認めた判決もあります。(東京高裁平成24年11月28日判決)

つまり、一部だけでも売渡請求が認められてしまう可能性がある、ということになります。

【クーデターの回避方法】

では、クーデターを回避するにはどうしたらいいのでしょうか。

「遺贈にしたらどうか?」

よく、遺贈にしたらどうかといわれるのですが、遺贈は特定承継であり、売渡請求が認められる一般承継ではないため適用されません。

しかし、特定承継になると今度は、譲渡制限株式の場合は、譲渡承認請求が必要になります。

そうしないと会社に対抗できないので、その間にクーデターが完了してしまったらどうなるのか、という問題があります。

「売渡請求の制度を定款に定めないという方法は?」

もう一つ、売渡請求の制度を定款に定めないという方法があります。

判例はないのですが、売渡請求の制度は相続等の一般承継が生じた後であっても、定款変更により制度を定めれば売渡請求することが可能、と考えられています。

過半数株主3分の2以上を有する株主であれば、あえて定める必要はなく、相続が発生した時に定款変更を決議して、請求すればいいのではないかということです。

【特別支配株主の株式等売渡請求】

・総株主の議決権の90%(定款でこれを上回る割合を定めた場合にはその割合)以上を有する特別支配株主ができます。
・他の株主全員に対して、その有する株式の全部を売り渡すことを請求することができます。
・株主総会決議は要件ではありません。
・平成26年会社法改正により導入されています。

<手続きの概要>
・特別支配株主が売渡請求について価格など一定の事項を株式会社に通知します。
・すると、株式会社(取締役会設置会社の場合は取締役会)の承認を得ることになります。
・そして、会社が取得日の20日前までに取得される側の株主に通知・公告をします。
・取得される側の株主が価格等に不服がある場合は、取得日の20日前から取得日の前日までの間に、裁判所に対して、売買価格の決定の申立をすることができます。

【株式併合】

数個の株式を合わせて、それよりも少数の株式にする方法です。

(例)
・全部で100株を発行している株式会社
・社長が80株
・Aが9株、Bが8株、Cが3株

株式併合で、10株をもって1株に併合するということになると、社長が80株だったので8株、A,B、Cは1株未満ということで金銭処理がされ、株式を集約できるという方法です。

<手続きの概要>
・株主総会の特別決議です。
・効力発生日の20日前までに通知・公告。
・端数は競売または会社が買取等。
・反対株主は、効力発生日の20日前から効力発生日までの間に、会社に対して、自己の有する株式のうち1株に満たない端数となるものの全部を公正な価格で買い取ることを請求することができます。

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