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    まず、租税法律主義ダイジョウダンからいきますけど、法律の根拠に基づくことなしには、国家は租税を賦課・徴収することはできず、国民は租税の納付を要求されることはないということで、これは法的安定性と予測可能性を示しております。

    そしてこの租税法律主義から5つまたは6つの原則が導かれます。今回は5つにします。

    課税要件法定主義、課税要件は法律で定めなければならない。課税要件明確主義、課税要件は明確でなければ法的安定性予測可能性が害される。

    合法性の原則ということで、課税要件を見たいしている場合には必ずその適用をしないといけないということ。適正手続保障原則、それから遡及立法の禁止と。今回はこの遡及立法の禁止について考えていきます。

    遡及立法の禁止というのは、納税義務者の不利益に変更する遡及立法は原則として許されない。逆に納税義務者の利益に変更する遡及立法は許されるということで、この遡及立法の禁止もやはり法的安定性、予測可能性、いきなり遡及して不利に変更されたら予測ができないし、法的に不安定な地位に置かれるということです。

    遡及立法が争われた事例をご紹介したいと思います。最後最高裁まで争われた事例です。
    平成16年度租税特別措置法の改正(4月1日施行)で、従来認められてきた土地・建物の譲渡損の通算を廃止し、年度の初めに遡って適用した立法措置。これが憲法84条に違反するかどうかが争われました。

    平成23年9月22日に最高裁判決は、結論は憲法違反ではない、遡及することができると判断しております。

    憲法84条は、課税要件及び租税の賦課徴収の手続が法律で明確に定められるべきことを規定するものであるが、これにより課税関係における法的安定が保たれるべき趣旨を含むものと解すると。

    そして、法律で一旦定められた財産権の内容が事後の法律により変更されることによって法的安定に影響が及び得る場合における当該変更の憲法適合性については、当該財産権の性質、その内容を変更する程度及びこれを変更することによって保護される公益の性質などの諸事情を総合的に勘案し、その変更が当該財産権に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかによって判断すべきなんだということです。

    従って、一律に遡及立法が絶対的に禁止ではないということを言っております。
    暦年途中で施行された改正法による本件損益通算廃止に係る改正後措置法の規定の暦年当初からの適用を定めた本件改正附則が憲法84条の趣旨に反するか否かについては、上記の諸事情を総合的に勘案した上で、このような暦年途中の租税法規の変更及びその暦年当初からの適用による課税関係における法的安定への影響が納税者の租税法規上の地位に対する合理的な制約として容認されるべきものであるかどうかという観点から判断するのが相当と。

    では、本件ではどうだったのか。

    まずは立法目的です。立法目的は長期譲渡所得による課税の不均衡を是正するという正当な目的と。適用の始期を遅らせた場合、税負担軽減を目的に駆け込み売却が多数行われ、立法目的を阻害するという公益上の要請があった。

    変更されるのは納税義務それ自体ではなく損益通算により税負担軽減を期待しうる地位にとどまる、不利益がそこまで大きくないということです。これは暦年終了時までの所得いかんによるんだと、変動しうるということです。

    遡及期間は3ヶ月に限られる、不利益もそんなに大きなものではないということで、合理的制約として容認されるとしましたので、遡及立法禁止は当然のことなんですけど、このように遡及して適用される場合がないので、なんとか3月31日までは大丈夫だということで、税制改正についてどんどん駆け込みでやるということになると、このような結果になることもあり得るということはご認識しておいていただきたいと思います。

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