税理士の先生より「個別和解型の特別清算」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。
質問
子会社の事業継続が困難にあることから、子会社に対する貸付金について税務的に損金参入を可能にするために特別精算の個別和解型を検討しています。
しかし、個別和解型における債権放棄の損金処理を否認した判例が存在しているため、下記について教えていただけますでしょうか。
⑴ 個別和解型での債権放棄による損失処理は難しいと考えるべきなのでしょうか。協定型なら大丈夫でしょうか。事業譲渡を伴なわない場合だと、従来実務に従い個別和解型によることも可能でしょうか。
⑵ 個別和解型と協定型では、終了するまでの期間と費用(弁護士報酬を含む)は目安としてどのような違いがありますか。債権者は親会社 1 社のみと仮定します。
回答
東京高裁平成29年 7 月26日判決は、個別和解型の特別清算手続において、子会社に対する債権を放棄して貸倒損失として処理した事案で損金算入を認めませんでした。同判決は、個別和解で貸倒損失を認めなかった理由として、
① 法人税法基本通達9-6-1⑵が定める「特別清算に係る協定の認可の決定を経た場合」に文言上該当しないこと
② 債権の消滅に係る協定及び計画の内容の合理性が法令の規制及びこれに係る裁判所の審査と決定によって客観的に担保されているのに対し、個別和解に基づく債権放棄の場合は、このような法令の規制及びこれに係る裁判所の審査と決定を欠いており、合意内容の合理性が客観的に担保される状況の下での合意がされたとはいえないこと
を挙げています。
法人税法基本通達9-6-1
法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。(昭55年直法2-15「十五」、平10年課法2-7「十三」、平11年課法2-9「十四」、平12年課法2-19「十四」、平16年課法2-14「十一」、平17年課法2-14「十二」、平19年課法2-3「二十五」、平22年課2-1「二十一」により改正)
⑴ 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
⑵ 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
⑶ 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
⑷ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額
9-6-1の⑴~⑶が、裁判所あるいは裁判所の判断に準じる計画の合理性が担保されていることを考えると、・・・
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