「相続税の申告=税法の知識だけで対応できる」と思われがちですが、実務に携わっている方ほど、それが幻想であると痛感しているのではないでしょうか。
2015年の相続税法改正以降、課税対象が一気に拡大し、従来は法人税中心だった税理士のもとにも、相続関連の相談が日常的に寄せられるようになっています。
顧問先から「ちょっと相談があるんだけど……」と始まるその一言が、実は民法の理解なしには踏み込めないケースも少なくありません。
相続税の申告書提出までのプロセスには、単なる財産のリストアップにとどまらず、遺産分割協議の内容確認、遺留分の問題、代償分割の取り扱い、相続放棄や限定承認の影響など、「民法に基づいた判断」が求められる場面が想像以上に多く存在します。
「税務判断」だけでは済まない領域
税理士は税の専門家であって民法の専門家ではありません。
しかし、民法の理解なしには相続税の論点すら浮き彫りにできないこともあります。
たとえば
•遺産分割協議がまとまっていない状態で申告期限が迫る
•預貯金の仮払いが制度として可能か判断に迷う
•被相続人名義の不動産の帰属が確定していない
こうした局面で、民法の理解があるかないかで、取れる選択肢やリスクの回避可能性は大きく変わってきます。
しかも、相続に関する助言内容が不適切であった場合、後々の損害賠償請求リスクも現実味を帯びてきます。
実際に、税理士の助言義務が争点となった裁判例も少なくありません。
改正相続法がもたらす実務インパクト
2018年の改正相続法では、「配偶者居住権」や「預貯金の払戻制度」など、新たな制度が導入されました。
これらは、相続税の申告や財産評価にも波及する内容です。
「居住権を設定した場合の評価はどうなる?」
「仮払制度を使った預貯金引出しは、税務上どう取り扱う?」
これらの制度を“知っている”と“知らない”では、申告精度も、顧客からの信頼度も、業務の効率も大きく違ってきます。
実務を支える「民法の使い方」
民法の条文をすべて読み込むのは非現実的です。
しかし、相続税業務を担ううえで「知っておくべき民法のツボ」を押さえるだけで、判断力と対応力は格段に高まります。
「どの法的知識が税務判断に直結するのか?」
「税務判断に必要な民法の知識をどう整理すればいいのか?」
そうした実務のヒントを、あらためて見直すタイミングに来ているのかもしれません
そこで、相続税業務を行う上で、最低限押さえておきたい民法の視点やリスク対応の考え方について、実務に即して整理した書籍がございます