就業規則があれば、労務トラブルは防げる。
このような解釈をしている方も多いと思いますが、就業規則は単に「あればいい」ものではなく、「きちんと運用して」はじめてリスク回避の効果を発揮します。
つまり、就業規則を整備するということは「作成」+「運用」をセットで考えるということです。作成については労働法その他関係諸法令に則した内容であることはもちろん、作成後の届け出や社員への周知も怠ってはなりません。運用については就業規則に規定されているとおり実行することが求められます。
当たり前のようですが、これができていない会社は山のようにあります。
例えば「正当な理由なく無断欠勤したときは、譴責とする。」という就業規則の規定になっているにもかかわらず、「まあ、今回はいいや」と言って、何ら処分をしない会社だってあります。
社員から、「就業規則がないのは会社としておかしい」という指摘を受けました。専門書やインターネット上の「就業規則の雛形」をもとに作成しても問題ないでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
ご自身で情報収集して就業規則を作成すること自体は問題ありません。ただし、雛形の丸写しは、労務トラブルの予防どころか、リスクを抱え込むようなものです。
就業規則というものは、企業規模や業種、経営者の考え方によって内容が変わってきます。例えば、社員が全員、平日の9時の始業、17時の終業で働いている一般企業と、休日・深夜も営業している飲食店では、労働時間・賃金・残業などの規定の仕方が必然的に異なってきます。
もし、この飲食店が一般企業用のものを基に就業規則を作成すると、労務トラブルが発生した場合、大きな不利益をこうむることもありえます。
就業規則は、ある程度の規模になったら必要なものです。しかし、全く実状の合わない雛形を丸写しするのであれば、ないのと同じ。誤解を恐れずに言えば、ない方がましということになってしまいます。
労務トラブルが発生すると、その内容によっては損害が数百万円単位になることも少なくありません。それならば専門家に依頼してオーダーメイドで作成し、運用ポイントについてもアドバイスを受けることが望ましいといえます。