社長である私、創業メンバー数人、社員1人の小規模の会社です。就業規則は将来、会社が成長してから作成しても良いでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
就業規則の作成は、社員(パートタイマー等も含む)が10人以上の企業から義務づけられていますので、この規模に達する段階で作成すればいいといえますが、以前このようなことがありました。
貴社のような社員1人、あるいは数人の会社から「遅刻や業務命令違反があり、懲戒したいがどうすればいいでしょうか」というご相談を受け、内容をうかがう限り社長の怒りもごもっともだと思いました。
しかし、懲戒処分を行うには就業規則を作成するとともに、懲戒の「種類及び程度」を明記しなければなりません。
残念なことに、ご相談事例では会社に就業規則がなかったため、「お気持ちは察しますが、現時点で懲戒処分はできません」と回答せざるをえませんでした。
そういった意味では、作成義務がない零細企業でも就業規則を作成しておいた方が絶対にいい、といえます。
今回、就業規則をはじめて作成するのですが、何か注意ポイントはありますか?
就業規則をはじめて作成するような場合は、会社が一方的に作成しても構いません。もっとも内容については労働基準法等の法令や労働協約に反しないようにしなければなりません。
作成した就業規則は、これを社員に見てもらい、意見を聴くことが法律で義務づけられています。社員は全員ではなく、労働基準法上の管理監督者ではない一般社員の代表者で構いません。
ただし、あくまでも意見として聴くのが基本であり、必ずしも、会社がその意見に拘束されるものではありません。
また、作成時には、社員の代表者に見せ、意見を聴くだけで良いのですが、運用時には、全社員に周知しなくてはなりません。
その上で、常時10人以上の社員を使用している事業場については所轄の労働基準監督署に届出を行う必要があります。
なお、判例では、意見聴取義務の違反や就業規則の届出義務違反については就業規則の効力が否定されない傾向にあるものの、周知義務違反については就業規則の効力を無効としており、注意しなければならない重要なポイントです。
作成・届出はきちんと実施しているのに、周知をしていない会社は意外と多いものです。
現在、東京を拠点に会社を経営しています。来期より関西支社を開設することになったのですが、顧問弁護士より「関西支社用の就業規則を作成した方がよい」とアドバイスされました。作成すべきでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
支社や支店がある場合、本社とは別に就業規則を作成しなければなりません。
労働基準法では、常時10人以上の社員が働いている事業場ごとに、就業規則の作成・届出が義務づけられています。
従業員には、正社員だけでなく、アルバイトやパートなども含まれます。
支店が長期的に数名規模であれば作成しなくても良いですが、立ち上げ時に10人を超える場合や、すぐに10人を超えそうな場合は、開設時に就業規則を作成しておくのが望ましいでしょう。
専門家に就業規則の作成を依頼したいと考えています。作成にかかる金額は、相場でどれくらいでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
就業規則をゼロベースから作成する場合、弁護士または社労士に依頼するのが一般的です。
では、実際に専門家に依頼した場合にいくらかかるかというと、一律には金額を言いづらい面もありますが、一般的な社労士の場合、数十万~30万円くらいの料金体系が最も多いように感じます。
同じ社労士でも、起業して日が浅い方や経験が少ない方だと、相場よりも安い料金体系にしていることもあります。逆に、100万円を超える弁護士・社労士事務所もなかにはあるようです。
いずれにせよ、どのくらいの期間をかけ、どのような内容を提供し(単なる就業規則の作成だけなのか、運用面でのサポートはあるのか、労働基準監督署への届出は誰が行うのかなど)、結果としていくらかかるのか、そのサービス内容については千差万別であるため、事前にしっかり確認しておくべきでしょう。
専門家に依頼して就業規則を作成する場合、完成までの期間はどれくらいでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
私の場合は、ご依頼から完成まで平均2ヵ月です。
「とにかく急いでいる、早く欲しい」という依頼については、可能な限りお応えできるようにしますが、「作ってくれればいい」「雛形のようなものがあれば、取りあえずそれで構わない」というような場合はお断りしています。理由は、就業規則は、「作ること」よりも「運用すること」が大事だからです。
しっかり運用するためには、就業規則に会社ごとの個別の性格や、経営者の考え方をしっかり反映させなければなりません。同じ業種、同じ規模の会社でも、就業規則は変わってきます。そのためにはどうしてもある程度の期間が必要です。
着手から完成までの流れとしては、平均4~5回対面で打合せを重ねます(1回当たり約2時間)。1回目の打合せでは、会社の情報(就業規則の運用実態や人事労務管理の状況など)を収集し、現状の問題点の洗い出しを行います。
私が重要視しているのは、クライアント企業に就業規則のポイントを理解していただくことです。2ヵ月、数回の打ち合わせで就業規則全般の運用を完璧にこなせる経営者や人事担当者は、そうはいないかと思います。
そのために、就業規則の作成・改定根拠を法令や判例等に基づき解説していきますが、「これだけは何が何でも押さえておいていただきたい!」というポイント(懲戒や休職、賃金など)についてはより時間をかけて説明することにしています。また、誓約書や身元保証書等の付随書類は、その一つひとつの意味や使い方も説明した上でご提供しています。