税理士の先生より「事業承継において議決権を留保する場合の注意点」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

事業承継における議決権についてです。

株価対策が適切に行われたため、代表権の委譲をする前に株式だけを先に後継者に譲渡する場合、後継者が経営者としての能力を備えるまでの間、現代表者が代表権を維持できるシンプルな仕組みとして下記 2 つの方法を考えています。

それぞれの法的なリスクと優位について教えていただけますでしょうか。

(設例)
株式数100株(現代表者が100%所有)
非公開会社
事業承継税制は使わない。

対策 1 99株のみ譲渡し、代表者が 1 株のみを継続所有し、定款変更にて代表者が保有する株式のみ議決権100株とする(属人的株式)。その際に代表者が死亡、意思能力を有さなくなっ
たときまたは代表権委譲の意思表示をしたときには、その効力を失う。

対策 2  100株すべてを贈与(相続時精算課税)するが、現代表者が意思能力を有し生存している間、または代表者が代表権委譲の意思を示すまでの間は、代表者解任の議決権を行使しない条件付きの贈与契約とする。

回答

1  属人的株式について

〈対策 1 の回答〉

前半部分は、議決権の有無によって株式の評価は変わらないと理解されていますので、有効な方法だと思います。

後半部分は、「その効力を失う」の部分を明確にして、定款に記載する必要があります。

また、「代表権委譲の意思表示をしたとき」の意味が不明確なので、誰が誰に対して、どのような意思表示をするのか、要件を明確化しておいた方がよろしいかと思います。

もし、このままの表現にするのであれば、内容証明郵便にて、会社と後継者に対して、「本書面をもって代表権委譲の意思表示をする」と記載して送付することになるかと思います。

2  条件付き贈与について

〈対策2の回答〉

この対策は、「解除条件」をつけるものですが、解除条件は、一旦完全に効力が生じた上で、後日、ある条件が発生した場合に効力を喪失させるものです。

したがって、当初贈与が生じた後、後継者は、100%株主として、会社法によるあらゆる権限を行使できますので、組織再編、増資減資、株式譲渡その他、条件を潜脱する手段を講じることができてしまいます。

かといって、すべての場合を解除条件にかからせてしまうと、経営に困難を生じますし、仮に条件が成就してしまった際には、2回の贈与が認定されるおそれがあるように思います。

3  結論

以上より、シンプルな方法としての二者択一とういことであれば、・・・

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