税理士の先生より「重加算税の賦課決定要件」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

顧問先の税務調査に立ち会ったとき、調査官から社長の机の中を見せてくれと言われ、やむを得ず見せました。その中に、ある特定の商品の一覧表が出てきました。

それが、結果として決算時の在庫漏れとなり、修正申告の対象になりました。

この件については、まったく社長自身、失念していて言われるまで気づかなかったそうです。

過年度も一度も計上されていませんでした。

税務調査官は重加算税の対象になることを強く主張してきました。

しかし、社長は「故意に隠匿したわけではなく本当に忘れていた」と言っています。

重加算税の賦課決定要件を満たすでしょうか。

回答

1  重加算税の賦課決定要件

単なる在庫商品の過少申告だけでは重加算税の賦課決定要件は満たしません。

判例によると、「納税者が故意に課税標準又は税額等の計算の基礎となる事実の全部又は一部を隠ぺいし、又は仮装し、その隠ぺい、仮装行為を原因として過少申告の結果が発生したものであれば足り、それ以上に、申告に際し、納税者において過少申告を行うことの認識を有していることまでを必要とするものではない(最高裁昭和62年 5 月 8 日判決)。」とされており、隠ぺい仮装を「故意」で行うことが必要とされています。

また、「課税処分に当たっての留意点」(平成25年 4 月 大阪国税局 法人課税課、TAINS H250400課税処分留意点、179頁)は、次のように記載しています。

「過少な所得金額を記載した申告書を提出した行為のみをもって直ちに⑴で掲げた重加算税賦課の課税要件を満たしたことにはならないので注意が必要である」「くれぐれも、所得金額が過小の確定申告書を提出して税額の一部を免れたことを内容とする『確認書』のみで安易に重加算税を賦課することがないよう留意する。」

そして、最高裁平成 7 年 4 月28日判決は、「重加算税を課するためには、納税者のした過少申告行為そのものが隠ぺい、仮装に当たるというだけでは足りず、過少申告行為そのものとは別に、隠ぺい、仮装と評価すべき行為が存在し、これに合わせた過少申告がされたことを要する」と判示しています。

したがって、本件では、過少申告とは別に、本件在庫商品を除外した行為が「故意」による「隠ぺい又は仮装」に該当するかどうかが問題となります。

2  本件における検討

本件では、・・・

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