税理士の先生より「人件費の支払いは重加算税賦課要件を満たすか」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

クライアントの法人の税務調査にて代表者のお母さまの給料月額8万円が架空人件費として最高7年の重加算対象と指摘されています。

90歳と高齢であるため対価性なしと判断されてのことです。

法人税個別通達でいえば、第 1 の 1 ⑵②で「帳簿書類の改ざん(偽造および変造を含む。以下同じ。)、帳簿書類への虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、帳簿書類の意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていることは、と隠ぺいではないものの仮装に該当する」とのことです。

勤務実態としては、来客へのお茶出しや掃除程度です。

給与水準は他の従業員と比較して、一番低い水準であり、帳簿上は、他の従業員と同様給料と記載、賃金台帳についても同様に給料としての記載があります。

また、金員の移動は実際にあり、その後、迂回して代表者が受け取っている事実もありません。

私は、「仮装」の認定は厳しすぎるのではないかと反論しています。

① 支払いの相手方が実在し、
② 金額が職務に対して不相当ということがあっても対価性がゼロということはあり得ないのでないか。

また、 7 年訴求の悪質な仮装の定義の参考になる条文等ございましたらお教え願いたいです。

回答

ご質問は 2 つと理解しました。

⑴ 本件人件費の支払いが重加算税賦課要件を満たすか
⑵ 7 年遡りの要件

⑴ 本件人件費の支払いが重加算税賦課要件を満たすか

国税通則法68条 1 項に規定する「…の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠ペいし、又は仮装し」たとは、最高裁判決により定義されてはいませんが、和歌山地裁昭和50年 6 月23日判決(TAINS Z082-3588)が、「不正手段による租税徴収権の侵害行為を意味し、「事実を隠ペい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得、財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲することをいい」いずれも行為の意味を認識しながら故意に行うことを要するものと解すべきである。」として以降、概ねこのように解されています。

架空人件費の場合に重加算税が課せられたケースとしては、勤務実態がなかったり、給与支払いがないにもかかわらず、架空のタイムカードが作成され、これに基づいて虚偽の賃金台帳等が作成された上で、これらに記載された金額を含む従業員に対する給料等の合計額が、総勘定元帳の「給料」欄に記載された、というような行為が「仮装」と認定されます。

したがって、今回の「仮装」は、勤務実態がないにもかかわらず、賃金台帳や総勘定元帳に虚偽の記載をしたか、ということになると思います。

勤務実態があり、また、給与支払いがあれば、それは「事実を歪曲」するものではなく、単に給与が過大であるかどうか、という問題となります。

今回は、給与支払いがある、ということなので、勤務実態の立証の問題に帰結するように思います。
 
そして、重加算税の賦課要件の立証責任も当然課税庁にありますので、課税庁において、「勤務実態がない」ことを立証する必要があります。

そこで、当該母親について、専用机、パソコン、スリッパ、湯飲み、入室鍵等の存在、自宅と事務所との往復定期券やスイカの使用履歴、業務日誌、取引先の陳述書等、反証資料を提示するのがよろしいかと思います。
 
これらが、当該母親について「勤務実態がない」ことを立証する際の矛盾証拠となるので、これらを覆す必要が出てくるためです。

(2)  7 年遡りの要件・・・

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