税理士の先生より「過年度の破産廃止決定に伴う売掛債権の貸倒処理」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。
質問
最終決算期の売掛債権(申告済み)の中に 4 年前に破産手続廃止の決定がされている取引先が見つかりました。
貸倒処理をしたいのですが、国税不服審判所の(平20.6.26、裁決事例集No.75、314頁)において、決定時が貸倒れ(損金の額に算入)の時点との記載がありますが、当該債権は9-6-2ではなく9-6-1の債権に該当するといった判例なのでしょうか。
であれば、損金経理を要件としない9-6-1を適用し、更正の請求で別表減算による貸倒処理をすることができるのではと考えているのですが、いかがでしょうか。
やはり、9-6-2の適用になり、決定時の年度において損金経理していないのであれば、当期において損金経理したとしても貸倒れとしては認められず、結果、いずれの期でも貸倒処理(損金算入)することはできないとなってしまうのでしょうか。
回答
1 法人税基本通達と破産手続き
法的倒産手続きには、破産、会社更生、民事再生、特別清算があり、破産を除く 3 つの手続きは、すべて貸倒れに関する通達9-6-1に明記されています。
しかし、破産は記載されておりません。
法人税基本通達 9−6−1
法人の有する金銭債権について次に掲げる事実が発生した場合には、その金銭債権の額のうち次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する事業年度において貸倒れとして損金の額に算入する。
⑴ 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があった場合において、これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
⑵ 特別清算に係る協定の認可の決定があった場合において、この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
⑶ 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより切り捨てられることとなった部分の金額イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの⑷ 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し書面により明らかにされた債務免除額
破産を除く 3 つの手続きには、法令により、「切り捨てられる」債務があり、債務が消滅する時点が明確なため、その日の属する事業年度に損金として算入することになります。
しかし破産手続きには、債務が「切り捨てられる」制度がありません。
したがって、破産の場合には、9-6-1で処理することができません。
そこで、9-6-2の処理となります。
9-6-2 法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。この場合において、当該金銭債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないものとする。
そうすると、「法人の有する金銭債権につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができる。」となり、「全額回収不能が明らかになった事業年度の損金経理」が要件となります。
原則としては、破産終結決定時がその時となりますが、破産終結決定前であっても、破産管財人から配当がゼロ円であることの証明があるなど、配当がないことが明らかな場合には、そのときに損金経理することも認められるとされています(国税不服審判所平成20年6月26日裁決)。
2 裁判例
損金経理が後日にずれた場合の裁判例としては、秋田地裁平成17年10月28日判決があります。
この事例は、
昭和61年5月29日 破産申立
昭和63年10月19日 破産終結決定
平成9月10月14日 債務者死亡
平成10年 4 月1日 貸倒処理
というものです。
裁判所は、・・・
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