今回は、争点整理表を理解して違法な更正等を受けないようにする、というテーマでお話をしていきたいと思います。

【争点整理表とは?】

争点整理表とは、租税職員が作成する行政文書で、争訟が見込まれる等の事案において、争点ごとに、争点の概要、課税要件、調査担当者の事実認定、納税者側の主張、証拠、時系列表などを記載するものです。

では、争点整理表の内容を確認するにはどうしたらいいのかというと、TAINSに次のような書類があります。

平成24年6月27日国税庁長官
「署課税部門における争点整理表の作成及び調査審理に関する協議・上申等に係る事務処理手続について(事務運営指針)」
(TAINSコードH240627課総2-21)

平成25年4月大阪国税局法人課税課
「課税処分に当たっての留意点」
(TAINSコードH250400課税処分留意点)

今回は簡単にしか紹介しませんので、詳しく内容を知りたい場合は上記の TAINSから確認してください。

【争点整理表の重要性】

争点整理表の重要性について、先述の行政書類に次のようにあります。

「争訟(異議申立て、審査請求及び訴訟提起をいう。以下同じ。)が見込まれる事案については、争訟に至ったとしても、処分の適法性が維持されるよう、原処分の段階から、争訟をも見据えた十分な法令面の検討、争訟の維持に向けた十分な証拠の収集等に取り組む必要があることから、可能な限り早い段階から、審理担当部署による関与・支援が適切に行われるよう、関係する部署がより緊密に連携・協調を図るよう留意する。」

つまり、更正をするかどうかが争点整理表をもとに検討される、ということです。

ということは、争点整理表には正確に納税者の主張を記載してもらわなければならない、ということになります。

争点整理表に租税職員の主張ばかりが書かれて、租税職員、調査担当者が誤解したまま納税者の主張を書いてしまう時には、その間違った主張に基づいて、審理担当者等と更正するかどうかを検討されてしまいます。
すると、間違った更正修正申告の勧奨等がされる恐れがあるということです。

ですから、正しく税務署内に主張を届けるためには、納税者が自分の主張を書いた主張書面を提出する、ということも検討されていいのではないかと思います。

【争点整理表の形式基準と実質基準】

では、どのような場合に争点整理表が作成されるのでしょうか。

それには、形式基準と実質基準について考えていく必要があります。

「形式基準」

次の処分等が見込まれる事案
①重加算税賦課決定
②増額更正・決定
③青色申告承認の取消し
④更正の請求に理由がない旨の通知
⑤偽りその他不正な行為による6年前、7年前の年分(事業年度)への遡及事案
⑥調査着手後6か月以上の長期仕掛事案

以上の事案以外で、署の定める重要事案審議会の署長付議対象に該当することが見込まれる修正申告若しくは期限後申告対象事案又は過怠税賦課決定処分対象事案

重加算税賦課決定、偽りや不正、増額更正ということになるので、修正申告の勧奨、増額更正が認められる事案については、この争点整理表はすでに作成されていると見込むことになります。

「実質基準」
調査非協力等により争点等に係る証拠収集が難航しているなど、課税要件事実の立証が容易でないと認められる事案や法令の解釈・適用が複雑・困難である事案など処分等の適法性の立証や判断が困難であるが、課税の均衡上、課税(賦課)処分すべきと認められる調査困難事案又は課税困難事案。

課税庁側でも慎重に対応する必要があるような事案です。

【争点整理表の記載事項】

争点整理表の記載事項には次のものがあります。

①事実経過
どのような事実があるのか、ということ。
②争点の概要
争点は何なのか。
③争点に係かる法律上の課税要件
④調査担当者の事実認定(又は法令解釈)
その事実、証拠書類には何があるのか。
⑤納税者側の主張、その事実、証拠書類等
⑥審理担当者との意見

争点整理表には、調査担当者と納税者側の双方の主張が書かれるので、ここで納税者の主張が正しく記載されることが重要になってきます。

しかし、往々にして、税務調査で議論が平行線になることが多いので、調査担当者に誤解を受けている場合も多いものです。

そのまま審理担当者に審理されてしまうと、その間違った納税者側の主張を基に検討されてしまうので、正しく納税者側の主張を届けていくということが重要です。

【納税者主張整理書面とは?】

そのために推奨をしているのが、納税者主張整理書面の提出です。

ここには今度は、課税庁側と同じように、納税者側の「法的三段論法」に則って、

①法解釈(課税要件事実の法解釈)
②納税者側の事実認定
(この中では、立証責任は課税庁側にあるということを前提にした主張を展開していくことになる)
③あてはめ

というように、論理を展開する納税者主張整理書面を提出するということを推奨しています。

合わせて、課税庁側が重要ではないと思っている証拠があるかも知れないので、納税者側が重要だと思う証拠を添付して、提出していくという方法もあるかと思います。

そして、正しい納税者側の主張も合わせ検討した上で、課税庁において更正がされるのがどうなのかということを慎重に検討していただく、というのが目的ということになります。

今回は、争点整理表というものについて簡単に説明しました。

詳しく知りたい、という先生は、冒頭でお話ししたTAINSの書類を調べていただければと思います。

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