税務調査の現場では、課税庁と納税者(そして税理士)の間で見解の相違がしばしば起こります。
それ自体は珍しいことではありません。
むしろ、何も衝突が起きないほうが不自然かもしれません。
問題は、その相違をどうやって整理し、どうやって納得できる形で調整していくか、です。
現実には、交渉の多くは口頭で行われます。
しかし、この「口頭でのやり取り」こそが、誤解やすれ違いの温床になりがちです。
•解釈がずれているのか
•事実認定の基準が違うのか
•手続に不備があるのか
•法の当てはめそのものに問題があるのか
こうした問題がごちゃまぜになったまま議論されることで、噛み合わない議論が延々と続き、結果として納税者にとって不利な修正申告や更正処分へと進んでしまう──
そんなケースを経験された方も少なくないのではないでしょうか。
では、何をどう整理すれば、論点がクリアになり、交渉が論理的に進むのか?
一つの実務的な視点として、7つの論点に分類して整理するという方法があります。これは、いわば「税務調査における法的七段論法」とも言えるフレームです。
その7つの視点とは
1.法律解釈(条文の意味にズレがあるか)
2.事実認定(どの事実を“あった”とみなすか)
3.法適用(当てはめ)(その事実に法律をどう適用するか)
4.信義則・裁量権の逸脱・濫用(行政判断が逸脱していないか)
5.手続違背(調査・更正における手続ミスがないか)
6.錯誤(事実誤認や理解不足がないか)
7.理由附記(更正処分にきちんと理由が明記されているか)
このように分けて考えることで、「どこでズレているのか」「それをどう示すべきか」が見えやすくなります。
単なる口頭の主張ではなく、整理された“納税者主張書面”として構造的に提出することで、課税庁側も冷静に判断しやすくなるのです。
これは決して、課税庁との対決を煽る方法ではありません。
むしろ、課税庁自身が誤った判断を下さないよう、双方にとって“建設的な着地点”を探るための手段です。
「調査対応での説明が伝わらない」
「議論が空中戦になって終わってしまう」
そんなとき、この7つの視点を“整理表”として可視化し、納税者側の主張を丁寧に伝えるという発想は、今後の実務に取り入れて損はないはずです。
おすすめの記事

業務に役立つひな形等

医業実務Q&A

税務・法律トラブルQ&A

税務・法律トラブルQ&A