【この記事の著者】
公認会計士・税理士 佐藤信祐先生
掲載日 2023/4/19
グループ会社に債務超過会社がある場合には、当該債務超過会社との統合を考えることがあります。
少数株主がいない場合には、合併のハードルは高くはありませんが、少数株主がいる場合には、合併対価資産として合併法人株式を交付してしまうと、価値のない被合併法人株式に対して、価値のある合併法人株式を交付することになるため、株主間贈与の問題が生じてしまいます。
何ら合併対価資産を交付しない無対価合併を行えば、株主間贈与の問題は避けられますが、少数株主を排除するために無対価合併を行った場合には、対価の交付を省略したとは認められないことから、非適格合併に該当してしまうという問題があります(法令4の3③)。
そのため、平成29年度税制改正前は、合併前に合併法人が被合併法人の発行済株式の全部を取得することによって、完全支配関係を生じさせることが一般的でした。
このような合併を行った場合には、合併の直前に当事者間の完全支配関係があることから、容易に適格合併に該当させることができます。
これに対し、平成29年度税制改正により、合併法人が被合併法人の発行済株式総数の3分の2以上を直接に保有している場合には、少数株主に対して交付した対価が金銭等不交付要件の対象から除外されました。
そのため、合併法人が被合併法人の発行済株式総数の3分の2以上を直接に保有する関係を成立させた後に現金交付型合併を行うことで、適格合併に該当させることができるようになりました。
なお、被合併法人の少数株主が所在不明である場合には、金銭を交付することができないため、未払金として計上しておくことが一般的です。
このような場合には、所在不明株主が現れたら支払えるようにしておくものの、最終的には時効が成立し、債務免除益が計上されることが多いと思われます。
しかし、債務免除益が計上されたとしても、そもそも交付すべき金銭が少額であれば、益金の額に算入される金額も少額になるため、実務上、支障がないことがほとんどだと思われます。
そして、このように少数株主に対して交付された金銭の額は、資本金等の額のマイナスとして取り扱われることになります(法令8①五)。
【合併受入仕訳】
①資産及び負債の引継ぎ
(純資産)300 | (資本金等の額)99 |
(現金預金)1 | |
(利益積立金額)200 |
②抱き合わせ株式の消却
(資本金等の額)10 | (被合併法人株式)10 |