損害賠償請求をされた時

損害賠償を防止する証拠作りをしても、なお損害賠償請求をされる場合がある。

もちろん、善管注意義務に違反して依頼者に損害を与えた、ということであれば、損害賠償責任が発生する。

税理士に対する損害賠償請求発覚の端緒としては、
(1)税理士が自分で気づくケース
(2)依頼者から指摘されるケース
(3)税務署から指摘されるケース

の3つがある。

依頼者から指摘されるケースとしては、依頼者が自ら発見するケースや他の税理士が検討した結果、税理士がミスを発見するケースなどがある。

税務署から指摘されるケースで多いのは、税務調査で指摘される場合である。

いずれにしても、慌ててミスを認めて依頼者に損害賠償金を支払うことは避けなければならない。

税理士の損害賠償責任が成立するためには、債務不履行ないし不法行為の法律要件に該当することが必要であるし、場合によって依頼者の損害を減らしたり、なくしたりすることができるかもしれない。

また、依頼者に過失がある場合には、過失相殺によって、依頼者に生じた損害の全てを支払う必要はない。

税理士に対する損害賠償責任が発生する事実が生じた場合には、落ち着いて正しいプロセスを辿ることである。

税賠保険への連絡と弁護士相談

税理士職業賠償責任保険では、事故があったことを知ったときには、遅滞なく保険会社に報告をしなければならないと定められている。

したがって、税賠保険に加入している税理士が事故があったことを知ったら、すぐに保険会社に報告しなければならない。

次に、税理士が損害賠償責任を負担するかどうかについては、法律問題である。税理士は、税法の専門ではあるが、債務不履行や不法行為を規定する民法の専門家ではない。

そして、損害賠償義務が成立するかどうかは、事実認定、法律の解釈適用という法律の専門的知識がなければ判断することができない。

したがって、自らの損害賠償責任が問題となったときは、法律専門家である弁護士に相談することが望ましい。

その際には、すでに作成した時系列表、証拠との対比表などともに、依頼者との契約書を忘れずに持参することである。

また、弁護士は税法に精通しているとは限らないので、当該事案において問題となる税法・通達・調査した判例等を持参し、弁護士の理解を得やすくした上で相談することが望ましい。

当事務所の過去の経験では、税理士が自分のミスと考え、依頼者に賠償金を支払いたいが、手続きがわからない、ということで相談に来たことがあった。

資料を検討し、事情を聞いてみると、税理士に善管注意義務がないのではないか、との結論になったことがあった。
つまり、税理士に損害賠償責任が発生しない事案と判断されたのである。

そのようなこともあるので、紛争に発展した場合には、弁護士に相談することが望ましい。

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