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    今回は納税者が税理士に相続財産を秘匿したという事案。その事案であっても重加算税が取り消されたという事例をご紹介して行きたいと思います。

    平成30年10月2日裁決です。相続人が相続財産である共済契約の解約返戻金や出資金の存在を知りながら、相続税申告の際、税理士に当該出資金の存在について告げなかったことから、相続税申告で脱漏された、という事案です。

    税務調査の結果、これは隠蔽または仮装がありますねということで重加算税が賦課されました。
    国側の主張としては
    (1)解約返戻金相当額等証明書を自分で取得している
    (2)被共済者等の名義を請求人(相続人)に変更した
    (3)出資金については、払戻請求を行ったことなどの各手続等(本件手続等)を行ったにもかかわらず、本件税理士に知っていながら各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかった

    これは隠ぺいだということになります。ところが裁決ではこれを取り消したんですが、理由としては次の通りです。

    請求人が行った本件手続等は相続により財産を取得した相続人が通常行う手続と外形上何ら異なるものではない。
    だからこれだけでは決まりませんよということですね。

    上記各共済契約のうち満期共済契約の返戻金及び上記出資金の払戻金が相続財産として申告されている貯金の解約金の入金口座と同一の口座に入金されているということで、まずは隠そうというような行為があったのではなく、普通にすぐバレるような口座に普通に入金しているということです。

    請求人が本件税理士に各共済契約及び出資金の存在を一切伝えなかったとしても、請求人が当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上で、その意図に基づく過少申告をしたとは認められないということです。

    もう1回戻りますと、これらの手続きは普通の手続きであって、かつわざと隠そうとしたりというような特段な行動は見られません、ということです。
    この部分はもう先生方皆さんご存じの最高裁判決です。

    平成7年4月28日判決、納税者の積極的な隠ぺい又は仮装行為がない場合の判断基準です。
    納税者が、当初から相続財産を過少に申告することを意図し、その意図を外部からもうかがい得る特段の行動をした上、その意図に基づく過少申告をしたような場合には、重加算税の賦課要件が満たされるというものです。

    したがって、ただ言わなかったというだけでなくて、特段の行動が必要だということになってきます。過少申告だけでは、もちろん重加算税の要件は満たしません。

    また、過失では重加算税の要件は満たしません。故意の隠ぺい又は仮装行為が必要なので税務調査等で指摘を受けた時には故意の隠蔽又は仮装行為はどれなんだという特定が必要になってきます。

    かつ、タイミングです。申告時に隠ぺい又は仮装行為が必要だということになります。

    例えば解約返戻金を相続人口座に入金して、税務調査で当該口座の存在を隠したと、嘘をついたとかそういう場合にはこれはもう初めから隠蔽または仮装をするつもりで、かつ税務調査の段階でも隠そうというつもりでやっている特段の行為がありますねというふうに認定される可能性が出てくるということになってきます。

    このように重加算税が安易に課されるような事例もあるかと思いますけど、争うことによって取り消しになるケースも結構多いのではないかと思いますので、よくご検討いただければと思います。

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