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    裁判例のご紹介です。大阪地裁令和2年6月11日判決です。

    事案は以下の通りです。

    原告会社は、平成26年3月7日、他の会社が元々あってその分割子会社として設立されました。

    原告会社は、平成26年3月12日、Cから金地金10グラムを4万8300円で購入し、同年4月2日、その全量をCに対して4万5710円で売却した。

    本件課税期間において課税売上割合が100%となったと、やってしまったということでその後は想像通りの展開です。

    原告会社は、平成26年4月30日、土地建物を3億6000万円で購入する売買契約を締結した。平成26年5月26日、売買契約に基づく所有権移転登記と引換えに、売買残代金が支払われた。

    原告会社は、売買契約の締結日である平成26年4月30日が課税仕入れを行った日であるとし、本件建物の取得に係る支払対価の額及び本件司法書士報酬に係る消費税等の全額を平成26年4月期の控除対象仕入税額に算入し、法定申告期限までに申告した。

    税務署長は、本件課税期間における課税仕入れではないとして更正等をしたい、ということです。

    原告会社の主張は、消費税法基本通達9-1-13を持ち出してきております。

    固定資産の譲渡の時期は、別に定めるものを除き、その引渡しがあった日とする。これ5月です。

    ただし、その固定資産が土地、建物その他これらに類する資産である場合において、事業者が当該固定資産の譲渡に関する契約の効力発生の日を資産の譲渡の時期としているときは、これを認めるということで、選択適用ができるかのような通達があります。

    そして契約の日が4月30日なので、これ認められるんじゃないの?というふうにお感じになることがあるかもしれません。

    ところが国側の主張は、この通達読み方についてはこう主張しております。

    そもそも消費税法においても権利確定主義が妥当するところ、本件通達本文及び同ただし書の定めも飽くまで、仕入れの相手方において資産の譲渡等による対価を収受すべき権利が確定した日をもって、消費税法30条1項1号にいう「課税仕入れを行った日」と解することを前提とした上で、引渡日をもって「課税仕入れを行った日」とすることを原則としつつ、外形上引渡しの日が明らかでないものや契約内容によっては、契約の効力発生時点で資産の譲渡等による対価を収受すべき権利が確定したといえる場合もあることから、そのような場合には契約の効力発生日をもって「課税仕入れを行った日」とすることを認める趣旨と解すべきということなので、選択適用を認めた通達じゃありませんよということが国側の主張となっております。

    では、裁判どう判断したのかです。

    平成26年5月26日に、本件売主が本件不動産につき原告への所有権移転登記手続をし、原告において本件不動産の使用収益が可能となり、本件不動産の引渡しがあったというべきであって、本件建物に係る売買代金請求権が客観的にみて実現可能な状態となった時点、すなわち、同請求権について権利が確定した時点は、引き渡しの日であると認定していますので、先程の通達にも関わらず原告敗訴、納税者敗訴となります。

    では、裁判所は通達についてどう読もうとしているのかということです。

    本件通達も、権利確定主義に反する取扱いを認めるものではなく、固定資産の譲渡等については、通常、その引渡しという事実があれば、その対価である権利の実現が客観的に可能な状態となり、権利が確定したといえることから、本件通達本文において、引渡日を「課税仕入れを行った日」とすることを原則としつつ、本件通達ただし書において、課税資産の譲渡等に係る契約の内容によっては、当該契約の効力発生日をもって、客観的にみてその対価を収受する権利の実現が可能な状態となり、権利が確定したと認められる場合もあることから、そのような場合にはということです。

    契約の効力発生日を「課税仕入れを行った日」とすることを認める趣旨であると解されるということなので、裁判所の判断においても選択適用を認めるものではないという結論になっております。

    通達を見るといっけん選択どちらでもいいですよと選択適用を認めているような文言になっているんですけど、判決も明言しています。

    引き渡し日基準と契約日基準の選択適用を認める趣旨はないということです。

    どちらか認定するんだということですね。
    ②引き渡し日基準がやはり原則です。
    ③ただし例外的に、契約の内容などによっては、契約の効力発生日をもって、客観的にみてその対価を収受する権利の実現が可能な状態となり、権利が確定したと認められる場合には、契約日とすることも課税実務上認められます
    ということになっておりますので、この通達の読み方ご注意いただきたいと思います。

    今回の裁判例の紹介は以上となります。

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