東京地地裁平成29年10月18日(判例秘書搭載)。

事案

会社A、B、Cはそれぞれ別の者を代表者にして設立され、会社Dは納税者を取締役として設立された。

各取引は、調剤薬局店舗の営業譲渡、調剤薬局の出店に関する顧問業務の受託、医薬品の卸売等であった。

税務署長は、各法人名で行われた取引による収益等を納税者個人の収益等と認定して、上記各処分を行った。

判決

裁判所は、以下を理由として、納税者敗訴の判決をしました。

本件各法人を一方当事者とする契約書等が存在するものの、本件各取引は全て納税者の判断に基づき意思決定がなされており、本件各法人の納税者以外の関係者は何ら意思決定に関与していない。

本件各取引に係る代金の一部が納税者名義の預金口座に振り込まれていた。

本件各法人は本件各取引に係る帳簿書類を作成・保存せず、決算も行っていなかった。

本件各法人では株主総会及び取締役会、社員総会の開催等、会社法等で規定されている法人としての手続も全く履践されていなかった。

本件に係る調査において、納税者は、納税者が本件各法人名義で行った本件各取引の収益及び対価は全て納税者個人に帰属する旨を供述した。

本件各取引の相手方らも、本件各取引は実質的に納税者個人との取引であると認識していたなどと供述している。

以上のことを総合的に判断すると、本件各法人は、実質的には納税者個人から独立した法人としての実体及び機能を欠き本件各取引の主体とはなり得ないものであり、本件各取引の主体は納税者個人であると認められるから、本件各取引の収益及び対価は納税者個人が享受するものであるというべきである。

また、重加算税の判断については、以下のようにしています。

本件各取引の実質的な主体は納税者であり、その収益及び対価はいずれも納税者が享受するものであるのに、納税者は、本件各取引について、本件各法人の名義を用いて契約書等を作成し、あたかも本件各法人が取引を行ったかのような外形を作出した。

帳簿書類を作成・保存せず、また、経費に係る領収書の一部を廃棄するなどして、本件各取引の収益及び対価の享受に係る事実を隠蔽し、又は仮装した。

解説

以上のように、法人の代表者に第三者が就任し、法人名義で取引が行われている場合であっても、実質的に法人が仮装のものであり、実体を伴っていないようなときは、その取引の収益等が個人に帰属する、と認定される場合がありますので、取引の実態の認定に注意したいところです。

疑わしい取引があった時は、本判決を示し、まず法人の帳簿書類を作成し、決算を行い、税務申告を行うことは助言した方がよいところです。

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