東京地裁平成13年10月30日判決
(TAINS Z999-0059)です。

事案

依頼者は、衣料用繊維製品及び服飾雑貨アクセサリーの企画及び製造、販売等を主たる業とする会社です。

依頼者の業種は、製造業ないしは加工業に該当するにもかかわらず、税理士は、卸売業だと判断しました。

税理士は、税務代理業務として、税務署長に対し、消費税簡易課税制度選択届出書を提出しました。

依頼者は、税理士が消費税課税制度を選択するにあたり、依頼者の業務形態を十分に調査しないまま簡易課税制度を選択させた行為により、一般課税制度を選択した場合に比べて損害を被ったとして損害賠償請求をしました。

裁判所の判断

一般論

税理士としては、消費税法37条1項に規定された簡易課税制度を選択すべきかどうか

を判断するにあたっては、顧客からの事情聴取や調査等を行い、事実関係を把握する必要があり、特に先に述べたとおり、簡易課税制度においては、課税売上をいくつかの業種に分類した上で、それぞれに対して異なるみなし仕入率が適用されることに鑑みれば、簡易課税制度の採用が納税額を減少させるか増大させるかの検討のため当該事業者の課税売上が属する業種や、実際の仕入率について十分な調査を遂げる必要があるというべきである。

当てはめ

税理士は、依頼者の課税売上が属する業種を判断するに当たり、依頼者が小売りを行わず、工場を有しておらず、自社では製造を行わないという依頼者代表者からの事実聴取の結果や、若干の仕入先を調査した結果、主たる依頼者の業務を卸売業と判断したものであるが、依頼者の業務内容は、その大要は原材料を購入してあらかじめ指示した条件に従って下請に出し、あるいは半製品を下請けに仕上げさせることにより製品を製造し、完成品を業者や商社に販売するもので、製造業又は加工業に区分されるものであり、このことは少し時間をかけて取引先の請求書や売上台帳を点検したり、依頼者に対する質問や調査を行えば容易に判明し得たものと認められるから、税理士の行った調査及び主たる依頼者の業務を卸売業と判断した行為は、不十分かつ不適切なものであったといわざるを得ない。

解説

税理士は、簡易課税を検討するにあたり、業種を判断すべく、代表者に対して事情聴取をし、かつ、若干の仕入れ先を調査していますが、裁判所はそれでは不十分とし、時間をかけて請求書や売上台帳を調査するとともに質問調査をすべきである、と判断しています。

消費税の選択については、依頼者に確認書類を徴求するなど一手間かけることも検討してよいのではないでしょうか。

おすすめの記事