執筆:弁護士・税理士 谷原誠

税理士の先生より「メールでの契約締結における証明力」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。

質問

ワードで作成した契約書をプリントアウトし、それに契約当事者が実印をもって捺印し、それをPDFファイルに変換し、メールにてやり取りする場合の、契約の効力および裁判上における契約締結の証明力について教えてください(そもそもメールでの契約の締結は可能なのでしょうか)。

この場合、紛争に至った場合の証明力に差はあるでしょうか。

回答

まず、契約は、口頭でも成立しますので、メールのやり取りにより、契約を成立させることは可能です。

しかし、契約書原本を交換せず、PDFファイルの交換のみで完了させる場合には、後日裁判において、「原本の交換をしてはじめて契約成立だと考えていた。内容に十分納得していないので、原本は渡していない」などと主張されることがあります(実際にこのような主張がなされることはよくあります)。

したがって、取り急ぎPDFファイルの交換で業務を開始するにしても、その後、原本の交換をすることをおすすめしたいと思います。

なお、PDFファイルの交換のみで契約終了としたい場合には、前述の抗弁リスクを低くするため、契約書の最後に、「本契約書は、原本の交換を行わないこととし、甲乙双方が記名押印した契約書の電磁的記録を乙が電子メールにて受領した時点で本契約書の内容で契約が成立するものとする。」と記載する方法があります。

最後の部分は、「乙から甲に電子メールで送信した時点で本契約書の内容で契約が成立するものとする。」とすることもできます。

ただ、顧問契約などの継続業務については、実際にやりとりをしながら業務を行っているので、「契約が成立していない」という抗弁は成立しにくいでしょう。

争いになるとしたら、契約の内容になると思います。

つまり、「委任契約は成立しているが、この契約書の内容には納得していない」というような争いです。

次に、紛争になった場合の証明力についてですが、・・・

この解説の全文については、【税理士を守る会】に入会すると読むことができます

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