事件のあった部屋の家主に告知義務はあるのか?




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俗に言う「いわくつきの部屋」に知らずに入居した男性が、マンションの家主を訴えた裁判の判決がありました。

この判例から、「都市伝説の謎」に法律的に迫ってみましょう。


事件はこうして起きた

2011年5月、弁護士の男性が兵庫県尼崎市内のマンションを競売で取得。ところが3日後、それまで住んでいた女性がこの部屋で自殺。

しかし、弁護士である家主の男性はそうした事実を説明せずに2012年8月、原告の男性とこの部屋の賃貸借契約を締結。

男性は引っ越しした後に近所の住人から自殺の話を聞き、翌日には退去。同年9月20日に契約解除を通告した。

男性は、自殺があったことを告げずにマンションの部屋を賃貸したのは不法行為だとして、家主の男性に対して約144万円の損害賠償を求め訴訟を起こした。


リーガルアイ

裁判で家主である弁護士の男性は、「競売後の手続きは他人に任せており、自殺の報告を受けないまま部屋の明け渡し手続きを終えた」と主張。

しかし、女性の死後に家主の男性が部屋のリフォームを指示したことから、「およそありえない不自然な経緯」「部屋の心理的な瑕疵(かし)の存在を知らないことはありえない」と裁判官は指摘。
(瑕疵=欠点・欠陥のあること)

「一般の人でもこの部屋は住居に適さないと考える。部屋には嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的な欠陥という瑕疵がある」として、神戸地裁尼崎支部は、賃料や慰謝料など約104万円の支払いを命じました。

ところで、こんな都市伝説や噂があります。

殺人や自殺があった賃貸物件は、その後に誰か(1人目)が入居したら、
その次の入居者(2人目)には事実を伝えなくてもいい。
しかし、1人目は最低1カ月は住まなければいけないので、大家さんはそのためにバイトを雇って住んでもらう。
バイトは大抵、殺人や自殺や幽霊を気にしない人がやるが、中にはそんな人でも1カ月も住めずに逃げ出してしまう部屋がある。
だから、その部屋は今でもずっと空室のまま…

バイトの件はともかく、こうした「いわくつきの部屋」について法律で解説してみましょう。

貸室の入居者の自殺は、その後に賃借する人にとっては一般的に嫌悪感を生じる原因となるので、自殺の事実はその部屋を借りるかどうかの重要な要素になります。

したがって民法95条により、賃借人は事実を知らなかったことを理由に賃貸借契約の無効を主張することができます。

民法第95条(錯誤)
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。


また、賃貸人は自殺後間もない時期に新たに部屋を賃貸する場合には、契約締結の際に事実を告知する義務があります。

これを怠ると、賃借人は賃貸人に対して告知義務違反を理由として、民法96条により詐欺として契約を取り消したり、解除することができます。
さらには、賃借人は引っ越し費用などを損害賠償請求もできます。

民法第96条1項(詐欺又は強迫)
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。


ちなみに、宅地建物取引業者、つまり仲介の不動産屋さんも自殺の事実を知っている場合には、告知義務があります。
ただし、事前に自殺があったことを調査する義務はないと考えられます。

ところで、賃借人は、部屋を善良な管理者の注意に基づいて使用しなければなりません。

民法第400条(特定物の引き渡しの場合の注意義務)
債権の目的が特定物の引き渡しであるときは、債務者は、その引き渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。


部屋の中で自殺をすれば、その部屋は心理的瑕疵となり、一般の人に貸すことができなくなるわけですから、部屋の中での自殺は、善管注意義務違反、ということになります。

賃借人が善管注意義務に違反して、物件に損害を与えた場合には、賃貸人には賃貸借契約に基づき、連帯保証人や賃借人の相続人への損害賠償請求が認められることになります。

 

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