執筆:弁護士・税理士 谷原誠
税理士の先生より「役員報酬の法的な定め」について、
税理士を守る会でご質問をいただきましたのでご紹介いたします。
質問
役員報酬について、締め日や支払日の概念がないということをよく聞くのですが、法的な定めとしてはどう考えるのが正しいのでしょうか。
たとえば、あるクライアントで、従業員の給与の支払方法が「3月分を4月25日に支払う」と決めている会社で、役員についても同様な概念で「3月分を4月25日に支払う」として運用しているのですが、役員の場合には、このような「3月分を4月25日に支払う」という概念があるのでしょうか。
また仮に、締め日と支払日の概念がある場合ですが、いつも悩むのが、定期同額給与の問題を考えるときに、「役員報酬について締め日ベースで、定期同額と考えてよいのかどうか」という点があります。
たとえば、3月決算で、6月までに役員報酬を変更しなければいけない場合に、6月分に関する7月支払い分から変更しても大丈夫なのかどうか、という点についても、あわせてアドバイスをいただけると助かります。
回答
この点については、法務と税務では区別して考える必要があります。
〈法務面〉
役員の場合には、役員報酬についての締め日や支払日について、法的な定めはありません。
3月分を4月に支払うことは、法的には可能です。
したがって、3月決算で、6月までに役員報酬を変更しなければいけない場合に、6月分に関する7月支払い分から変更しても問題ありません。
〈税務面〉
税務上は、損金として認められるかどうか、がポイントになってきますので、定期同額給与に該当するように運用しなければならないことになります。
定期同額給与は、「決議」ではなく「支給」を基準とされていますので、いつ支給されたのか、がポイントとなります。
法人税法第34条1項1号
その支給時期が一月以下の一定の期間ごとである給与(次号イにおいて「定期給与」という。)で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものその他これに準ずるものとして政令で定める給与(同号において「定期同額給与」という。)
役員の職務執行期間は、通常の場合、定時株主総会による選任決議(即日就任承諾)の日から翌年の定時株主総会の終了日です。
そして、定時株主総会において、同時に役員報酬について決議がされますが、そこで決議されるのは、当該事業年度における役員報酬となります。
したがって、3月末日で定時株主総会が開催されるとすると、そこで決議される役員報酬は、4月1日から翌年の定時株主総会の日(おそらく翌年3月ころ)までの期間に支払われる役員報酬となります。
そこで、多くの場合には、3月末日の定時株主総会で決議した場合には、4月の役員報酬から改定されることになります。
この場合に、法人税法施行令69条1項1号の次の要件に該当するかどうかを検討することになります。
法人税法施行令69条第1項第1号
定期給与で、次に掲げる改定がされた場合において、当該事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又は当該事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額が同額であるもの
これを当てはめると、・・・・・
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