会社の取締役や監査役等が亡くなった際に支払われる退職金は、通常時に支払われる退職金と税務上の扱いが異なります。
本記事では、死亡退職金に課される税金の種類と、役員に死亡退職金を支払う際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
役員退職金(役員退職慰労金)とは
役員退職金は、取締役や監査役等の役員が退任する際に支払われる退職金をいいます。
従業員への退職金は退職規定に基づき支払われるのに対し、役員退職金は退職規定ではなく、株主総会で支払いの有無や金額を決定します。
役員退職金を支払う法人は、原則として退職金を損金として計上できますが、過大に支払われた退職金については損金不算入となるので注意が必要です。
また、役員退職金は退職所得として所得税の課税対象となりますが、役員退職金が死亡により支払われる場合には所得税ではなく相続税の対象となります。
現職中に死亡した役員に対して支払われる退職金の取扱い
退職金は、支払われる状況によって課税対象となる税目が異なります。
死亡退職金は相続税の対象
被相続人に支給されるべきであった退職手当金等(退職手当金や功労金など)は、相続税の課税対象です。
退職金など受け取る名目は関係なく、実質的に被相続人の退職手当金等として支給される金品が対象となり、現物で支給されたものについても退職手当金等に含まれます。
退職手当金等の支給が被相続人の死亡後3年以内に確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされ、相続税の課税対象となります。
したがって、相続税の申告書を提出した後に死亡退職金の支給が確定した際は、修正申告等の手続きが必要です。
<死亡後3年以内に支給が確定したもの範囲>
- ・死亡退職により支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
- ・生前に退職していた場合において、支給される金額が被相続人の死亡後3年以内に確定したもの
死亡退職金の非課税控除
相続税では死亡退職金に対する非課税控除が設けられており、相続人が受け取った退職手当金等が下記の算式で求められた非課税限度額以内であれば、死亡退職金は非課税となります。
500万円 × 法定相続人の数=非課税限度額
相続放棄をした人がいても、法定相続人の数は放棄がなかったものとした場合の人数で計算します。
そのため、法定相続人3人のうち1人が相続放棄をしたとしても、非課税限度額を計算する上での相続人の数は3人です。
死亡退職金の非課税控除を適用できるのは相続人に限られ、相続人以外の人が取得した退職手当金等には非課税の適用はありません。
また、相続人が死亡手当金等を受け取ったとしても、その者が相続を放棄した場合や相続権を失った者であるときは、非課税控除の適用対象外です。
相続税法上の死亡退職金に該当する範囲
死亡退職金に該当する者は基本的に相続税の対象となりますが、支払われる内容や金額によっては、課税対象から除かれるものもあります。
弔慰金等の取扱い
被相続人の死亡により相続人等が受ける弔慰金・花輪代・葬祭料等は、退職手当金等に該当するものを除き、一定額まで非課税対象になります。
被相続人の死亡が業務上の死亡である場合、非課税となる範囲は被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の3年分に相当する金額です。
「業務」とは、被相続人に遂行すべきものとして割り当てられた仕事をいい、「業務上の死亡」は、直接業務に起因する死亡または、業務と相当因果関係があると認められる死亡をいいます。
被相続人の死亡が業務上の死亡でない場合、弔慰金等のうち被相続人の死亡当時における賞与以外の普通給与の半年分に相当する金額は非課税対象となり、超えた部分については退職手当金等として扱われます。