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中小企業会計要領とは?適用対象・活用メリットを解説

中小企業の会計実務を支援するために策定された「中小企業の会計に関する基本要領(以下、中小会計要領)」は、企業の状況に応じて利用できる会計のルールです。

企業の規模や業種を問わず柔軟に活用でき、財務管理の効率化にも寄与します。

本記事では、中小会計要領の概要、対象となる企業、そして活用するメリットについて解説します。

中小企業会計要領とは

中小企業会計要領は、中小企業の経営実態に即した会計処理を可能にする目的で策定された、実務に適したわかりやすい会計基準です。

制定の背景

非上場企業である中小企業は、上場企業向けの会計ルールに基づく必要はありませんが、中小企業会計要領が制定されるまで、簡便に利用できる会計ルールは存在していませんでした。

中小企業は、大企業と比べて経理にかけられる人員や時間が限られており、複雑な会計基準を完全に適用することが難しい場合があります。

こうした状況を踏まえ、企業の経営実態に合わせた会計処理を後押しするために「中小会計要領」が策定されました。

中小企業に最適化された基準として広く利用されています。

「中小会計指針」との違い

中小企業向けの会計ルールには、「中小会計要領」のほかに「中小企業の会計に関する指針(以下、中小会計指針)」があります。

中小会計指針は会社法に準拠した、より厳密な会計処理を求めるため、金融機関との取引で詳細な説明を求められる場合や、将来的に上場を視野に入れる企業などに適しています。

一方、中小会計要領は、中小会計指針と比較して、より小規模な企業を対象としており、簡便かつ実務に即した会計処理が認められています。

さらに、中小会計要領は国際会計基準の影響を受けないため、制度改正による処理変更の懸念が少なく、安定的に継続利用できる点も特徴です。

中小企業会計要領の特徴と簡便性

中小会計要領は、上場企業などに適用される厳格な会計基準と比べて、多くの処理方法が簡素化されています。

たとえば、固定資産は原則として取得原価で計上するなど、複雑な計算や厳密な見積もりを必須とせず、実務的で合理的な判断に基づく処理が可能です。

これにより、会計の専門知識を持つ人材が限られる中小企業でも、一定の会計水準を保ちながら業務負担を軽減できます。

実務効率化と信頼性確保の両立が可能です。

中小企業会計要領の適用対象となる企業の範囲

中小会計要領は、特定の企業に利用が限定されているものではなく、すべての中小企業の利用を想定しています。

利用が想定される企業

中小企業会計要領に基づく会計処理は、中小会計指針と比べて簡便な処理が適当とされる中小企業を対象としています。

具体的には、金融商品取引法の規制対象となる会社および、会社法上の会計監査人設置会社を除く株式会社が対象です。

製造業、卸売業、小売業、サービス業など、多様な業種に対応しており、特に上場を予定していない企業や、外部への詳細な会計報告義務が限定的な企業にとっては、実務対応を円滑に進めるうえで有効です。

幅広い中小企業が対象です。

税務当局との関係性

中小企業においては、税務申告が計算書類等の作成目的の大部分を占める傾向があります。

そのため、中小企業会計要領では、法人税法に定められた処理との整合性が意識された会計が行われています。

この要領に沿って作成された決算書は、税務当局に対して一定の信頼性を示す資料となり、申告内容の妥当性を裏付ける根拠として活用できます。

適切な会計処理が行われていれば、税務調査における指摘リスクの低減にもつながり、企業の税務対応力の向上にもつながります。

税務調査対応力の強化につながる点も大きなメリットです。

また、税理士などの専門家と連携することで、制度の理解を深め、税務上の誤解や不備を防ぐことが可能です。

中小企業会計要領を活用するメリットと留意点

中小企業会計要領の活用は、財務の透明性向上に寄与しますが、導入にあたっては内容の理解と準備が求められます。

会計処理の実務負担を軽減できる

中小会計要領では、実務における会計慣行を十分に考慮し、会計と税制の調和を図った上で、会社計算規則に準拠した処理が認められています。

複雑な注記(決算書に付随する補足情報)や詳細な開示は最小限に抑えられており、資産評価や収益認識においても簡便な処理が可能です。

このような仕組みにより、経理担当者の作業負担が軽減され、限られた人員でも適正な決算書の作成がしやすくなります。

人員不足の中小企業に有効です。

財務諸表の信頼性向上と資金調達への影響

中小会計要領に準拠した決算書は、金融機関や取引先に対して、自社の会計が一定のルールに基づいていることを示す客観的な資料となります。

特に融資審査では、会計処理の妥当性も評価されるため、要領の活用は資金調達の円滑化につながる可能性があります。

金融機関からの信頼確保に役立ちます。

適用にあたっての社内体制整備と注意点

中小企業会計要領を適切に活用するには、他の会計基準と同様に、内容を正しく理解し、必要な帳簿や証憑を整理することが求められます。

ルールが簡潔である一方、簡便性に過度に依存すると、将来的に事業が拡大して「中小会計指針」への移行や外部監査が必要になった際に、対応が困難になる可能性があります。

そのため、事業規模が拡大している場合には、中小会計要領ではなく、中小会計指針に基づく処理を選択するなど、自社の成長段階に応じたバランスの取れた運用が重要です。

成長段階に応じた基準選択が必要です。

まとめ

中小会計要領は、経理の実務負担を軽減しながら、財務報告の信頼性を高めることができる、中小企業にとって有効な選択肢です。

企業の規模や業態に応じた柔軟な運用が可能であり、資金調達や税務対応にも前向きな効果が期待されます。

ただし、こうしたメリットを最大限に活かすためには、要領の正しい理解と社内体制の整備が不可欠です。

必要に応じて外部の専門家とも連携し、自社の経営管理の実効性を高めていくことが求められます。

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