今回は、法律違反を犯した女子大生が、じつは被害者だったという事件です。
一体どういうことでしょうか?
ミステリーというわけではありません。
法的に解説します。
事件はこうして起きた
「元近大生ら、飲酒運転の車に同乗させ示談金詐取」(2016年1月5日 読売新聞)
飲酒運転の車に女子大生を同乗させて事故を起こしたと装い、示談金名目で現金を騙し取ったとして、奈良県警は元近畿大生の男(20)など4人を詐欺容疑で逮捕した。
事件があったのは2015年9月。
男とその共犯容疑者らは、奈良市内の店で女子大生(21)と一緒に飲食した後、男が飲酒運転をして女子大生(21)を車で送る際、通行人役の男と接触事故を起こしたように偽装。
「全員、飲酒運転の同罪だ。退学になるかもしれない」などと話し、女子大生から示談金として130万円を騙し取った。
2015年9月~10月にかけて、同様の示談金の支払いを装う手口で計6人から約370万円を騙し取った疑いがあり、他にも近畿大生を中心に10件以上の被害があることから被害総額は1000万円を超えるとみて県警は調べを進めるとしている。
なお、別の報道によると容疑者の4人の中には弁護士の息子役もいて、事故現場から父親に電話をして、「同乗者も示談金を払わないといけない」と法律の確認をする芝居も打っていたという。
リーガルアイ
【詐欺罪とは?】
詐欺罪の保護法益は個人の財産のため、単に騙しただけ、あるいは財産以外の利益が侵害された場合は成立しません。
一般的な「騙された=詐欺」という概念と法律は少し違うことに注意が必要です。
「刑法」
第246条(詐欺)
1.人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する。
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。
【飲酒同乗の罪とは?】
さて、この事件では容疑者らは女子大生からお金を騙し取っています。
そこには、次のような構図、流れがあります。