銀行や証券会社など、金融機関から提案される節税策には有効的なものもある一方、損失が発生した際は自己責任となります。
講じた節税策に不備があれば、税務署から指摘されるリスクがありますので、金融機関の税金対策に危険が潜む理由と、専門家に意見を聞くメリットについてご説明します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
なぜ金融機関から提案される節税手段が危険なのか?
金融機関が節税アドバイスを行うのは、金融機関の商品を購入させたり融資を受けさせたりするためです。
そのため顧客が実際に節税できるかどうかは、二の次になってしまうのが現状です。
提案される節税策に効果があるとは限らない
金融機関は利息や手数料を収入源とするため、顧客にメリットがある商品ではなく、金融機関が得をする商品を提案してきます。
たとえば投資信託は管理費や運用手数料が収入となり、運用の成否が収入に影響することはありませんし、資産運用が失敗しても、出資者の懐が痛むだけで金融機関の資産は減りません。
節税手段も同様で、節税効果が得られなかった場合でも金融機関自体が損失を被ることはありませんので、提案される節税策に効果があるのかは不透明です。
長い付き合いの金融機関であれば、顧客の利益になる取引を提案してくれるかもしれませんが、それは取引を継続するためのものであり、節税を第一に考えているものではない可能性があります。
提案される節税策が法律上の要件を満たしていなかった際のリスク
金融機関は資産運用などに関してはプロですが、税務関係の専門家ではありません。
資産運用に関連した法律知識は身に付けている一方で、節税に特化した知識は乏しく、特例制度の要件や会社にあった節税手段を理解していないことも考えられます。
節税効果の高い特例は、適用要件が厳しいことがほとんどで、一つでも要件を満たさなければ特例は利用できません。
万が一、特例要件を満たさずに制度を利用すれば、否認され追徴課税を支払うことになるため、相応のリスクを背負って節税策を講じることになります。
税務調査を受けた際に反論できない
税務調査では法令解釈や、事実認定が焦点になることも多いです。
法令解釈は法律の定めた事項をどのように当てはめたのかを説明する必要があり、調査担当者が納得しなければ否認される可能性があります。
事実認定については、経費の支払いの有無の証明や、証拠となる書類などが提示できるかが焦点となります。
経費として支出したものに領収書など証明できるものがなければ、税務署が経費を認める可能性は低いため、証拠となる書類を保存しておくことも重要です。
証拠保全は会社が行うものですが、税務調査の際に必要となる書類が何かを事前に把握しておかないと保存することもできません。
金融機関は節税手段を知っていても、税務調査の際にどのような書類が証拠として求められるかは知りませんし、税の専門家ではないため、節税の根拠となる法令や解釈について詳細に説明することは難しいです。
もし税務調査を受けた際、調査担当者に意見を主張できなければ、節税策は否認され、本来支払う必要のない追徴課税も納税しなければいけなくなることも想定されます。
税金相談は税理士などの専門家にすべき理由
税理士業務を行うことができるのは、税理士や公認会計士、弁護士など、税理士資格を有する人のみです。
税務書類の作成は税理士資格がある人でないとできませんし、金融機関よりも税に関する知識・経験は多いです。
税理士は節税を第一に考える
税理士は、税務に関する専門家として独立した公正な立場で納税義務者の信頼に応える、納税義務の適正な実現を図ることが使命です。
金融機関の場合、手数料等を得る目的で節税にはならない商品を紹介するケースもあります。
それに対し税理士は、納税者が適切に申告することを第一に考え、法律の範囲内で適切なアドバイスをすることが役割なので、納税者が求めている節税方法を提案してくれます。
節税策の法的根拠を明確に示す
節税策を講じても要件を満たしていなければ税務署に指摘されますし、税務調査で反論できなければ経費を否認され、追徴課税を支払う可能性も出てきます。
しかし税理士は税の専門家なので、法律要件はもちろんのこと、特例制度を適用する際のメリット・デメリットの双方を提示してアドバイスをすることが可能です。
また税務署から指摘を受けた場合でも、節税策が適法である法的根拠を提示できますし、証拠書類として保存すべき書類についても事前に説明できます。
そのため税務調査を受けたとしても、節税策が即座に否認されることはありません。