「贈与税の納税義務の発生時期に関する裁判例」をご紹介します。

贈与税は、贈与による財産の取得の時に納税義務が発生します(国税通則法第15条2項5号)。

そうすると、いつ、「贈与による財産の取得」があったのか、が問題となります。

実体法である民法では、贈与は贈与契約の成立によって効力を生じます。

そうなると、不動産の贈与税を免れよう、と考える人が出てきます。

口頭で不動産の贈与契約をして贈与の効力を発生させて納税義務を発生させ、贈与が税務署にバレないように所有権移転登記を留保し、時効完成まで待つ、という方法です。

しかし、それは、通用しません。

書面によらない贈与は、履行が終了するまで取り消し(撤回)ができる(民法第550条)ことから、「贈与により財産を取得した時」とは、書面によらない贈与の場合においては「贈与の履行の終った時」であるとされています
(東京高裁昭和53年12月20日判決、税務訴訟資料103号800頁)

そうなると、次にはこう考える人が出てきます。

贈与契約を公正証書で締結し、所有権移転登記を留保すれば、取消ができないので、契約時点で贈与の効力が発生するのではないか、と。

これに関しては、次のような判例があります。

事案

名古屋高裁平成10年12月25日(租税百選第6版76)です。

・昭和60年3月14日付で、不動産を贈与する旨の公正証書を作成した。

・平成5年12月13日、昭和60年3月14日贈与を原因とする所有権移転登記をした。

・贈与税の申告は行っていない。

・税務署長は、平成5年分の贈与税の決定処分および無申告加算税賦課決定処分をした。

判決

・贈与が行われたにもかかわらず登記をすることができなかったことをうかがわせる事情も認められない。

・本件公正証書記載の贈与であれば、本来、所有権移転登記をすれば足りるのであり、あえて公正証書を作成する合理的な必要性はなかった。

・本件公正証書は、将来Xが帰化申請する際に、本件不動産をXに贈与しても、贈与税の負担がかからないようにするためにのみ作成された

・贈与者も受贈者も本件不動産を公正証書記載どおりに贈与する意思はなかった

⇒書面による贈与とは認められない。

⇒書面によらない贈与は履行の時に贈与による財産取得があった。

⇒不動産の贈与の場合は、不動産の引渡又は所有権移転登記がされたときにその履行があったと解される。

おわりに

書面による贈与の場合には、取消ができず、契約時に効力が発生します。

しかし、本件の所有権移転登記のように、贈与の効力を望むのであれば、当然行っているべき行為をしていない時には、

「その時点で贈与する意思がなく、書面による贈与ではない」と認定される可能性がある、ということです。

もし、依頼者から、上記のような提案により、贈与税を免れるような提案を受けた時には、上記裁判例を示して考え直すよう助言することをおすすめします。

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