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一度、「自動車運転過失傷害罪」で起訴した少年について、地検がさらに罰則の厳しい
「危険運転致傷罪」に訴因を変更するよう地裁に請求するという事態が起きました。
一体、どういうことでしょうか?
事件はこうして起きた
2013年9月、京都府八幡市で当時18歳だった少年が自動車を運転中、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速してスリップ。
歩道の柵をなぎ倒し、集団登校中だった小学生13人の列に突っ込み、スポーツカーはそのまま民家に激突。5人が重軽傷を負いました。
少年は、2012年10月に自動車免許を取得したばかりで、すぐに親から車を買い与えられていたようです。
自宅近所や事故現場付近では、少年がスピードを出したり、後輪をすべらせるドリフト走行など危険な運転を繰り返しているのがたびたび目撃され、その無謀運転は近所の人の間では有名だったということです。
少年は当初、自動車運転過失傷害容疑で現行犯逮捕されましたが、京都地検が危険運転致傷の非行事実で京都家裁に送致。
しかし、家裁は自動車運転過失傷害の非行事実に切り替えて逆送し、地検も同罪で起訴していました。
2012年から、京都では暴走車が通行人に死傷を負わせる交通事故が頻発しています。
「京都祇園軽ワゴン車暴走事故」
2012(平成24)年4月12日、京都市祇園で起きた暴走車による8名が死亡し、11人が重軽傷を負った事故。
事故原因は、運転者男性の持病のてんかん発作によるものであるとされた。
「亀岡市登校中児童ら交通事故死事件」
2012(平成24)年4月23日、京都府亀岡市で当時18歳だった少年が運転する軽自動車が、小学校へ登校中の児童と引率の保護者の列に突っ込み、計 10人がはねられて3人が死亡、7人が重軽傷を負った事故。
事故原因は、少年の遊び疲れと睡眠不足による居眠り運転とされ、2013年9月30日、大阪高等裁判所は一審判決を破棄し、懲役5年以上9年以下の不定期刑を言い渡し、検察・弁護側双方が上告しなかったため、この判決が確定した。
今回の事故の訴因変更請求は、悪質運転による死傷事故の罰則を強化する新法「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が参院本会議で全会一致により可決・成立した矢先のことでした。
リーガルアイ
なぜ、京都地検は訴因を「危険運転致傷罪」に変更する請求をしたのでしょうか?
じつは、起訴後の調査で交差点への進入速度が時速40キロ以上だったことが判明したことで、危険運転致傷罪の規定のひとつである、「進行を制御することが困難な高速度で自動車を走行させる行為」にあたると判断したとみられます。
しかし、時速40キロでの事故は、日常的に起こる事故であって、珍しいことではありません。
では、どうして時速40キロが重要なポイントとなるのでしょうか?
危険運転致傷罪の「進行を制御することが困難な高速度」とは、速度が速すぎるため、道路の状況に応じて進行することが困難な状態で自動車を走行させることをいいます。
条文では、具体的に「速度〇〇キロ以上」と決まっているわけではありません。
具体的な道路の道幅や、カーブ、曲がり角などの状況によって変わってくるし、車の性能や貨物の積載状況によっても変わってきます。
ということは、高速道路であれば、時速100キロであっても進行を制御することが困難とは言えませんが、曲がりくねった細い道路では、時速40キロであっても「進行を制御することが困難」となりうる、ということです。
今回の事故では、T字路を左折して府道に入ろうとした際、急加速して時速40キロに至った、ということですので、